小選挙区制の問題点を改正するために、このテーマを立ち上げていますが、他の選挙制度にも、問題がないわけではありません。
今回は、番外編として、比例代表制の弱点を突いた『れいわローテーション』を考えてみたいと思います。




れいわ制新撰組は、参議院比例区の選出議員の辞職に伴い、繰り上げ当選のローテーションを行うと、発表しました。
参議院選挙は、2022年7月に行われたので、事案が発生した2023年1月時点では、任期が5年半も残っていました。
このタイミングで、比例代表制選出議員が体調不良により辞任しました。
比例代表制の規定により、該当の政党の次点が繰り上げ当選となります。
れいわ新撰組では、この繰り上げ制度を積極的に利用し、繰り上げ当選者が1年後に意図的に辞任することで、1年毎に新たな参議院議員を作り出すと言い出したのです。


はっきり言って、小選挙区制の問題より、遥かに小さな問題です。
元々、比例代表制は、人物を選出するのではなく、政党を選出する制度です。政党としては、変わっていないので、民意は反映されます。

比例代表制の問題は、比例代表制選出議員が離党しても、退職にはならないことでしょう。
当選時の選挙で比例名簿を出していた政党に移籍した場合のみ、退職になります。
それ故、離党して無所属か新党を結成し、当選時の所属政党に対立する政党と協調することもできます。
一方で、離党した時点で退職としてしまうと、所属政党が解党した場合に議員ではなくなってしまいます。
また、新党結成のタイミングも、限定されてしまいます。

元々、政党を選出するのに、政党の得票を生身の議員に置き替えるところに、無理があるのです。
非拘束名簿式は、いくらか緩和されますが、根本原因は変わらないので、問題は残ります。
冒頭で、「大した問題ではない」としたのは、類似の問題は、小選挙区制でも多少はあります。
小選挙区制(大選挙区制も同様)の当選者も、大なり小なり、政党の支援を受けています。有権者も、少なからず所属政党を見て投票します。
なので、当選後に、離党したり、他党へ移籍することは、本来なら問題にすべき案件です。
その点では、離党の問題だけで、比例代表選の欠陥とは言えません。
ただ、拘束名簿式比例代表制は、候補者を有権者が選択できないので、離党=退職とした方が良いように思います。




さて、れいわローテーションですが、これを全面的に認めてしまうと、類似の応用が可能になります。

自民党なら、参議院比例区の当選者の全員が1年毎に辞職をすれば、37人(2019年と2022年の当選者)の6倍の222人が参議院議員経験者を生み出すことができます。
衆議院比例区の当選者(72人)も合わせると、毎年109人の国会議員経験者を増やし続けることができます。

国会議員を1年間続ければ、通常国会を経験できます。
これは、貴重な経験です。
ですが、国政を利用して行うものではありません。
国政は、国民の生命や財産にも関わる重要な仕事です。
繰り上げ当選のローテーションは、政党にメリットがあっても、国民にはメリットがありません。
政党が、国民より政党を優先するようでは、本質的な部分で独裁政治と同じです。




ましてや、「箔をつける」ような目的なら、論外です。


この欠陥には、何らかの対策を実施すべきでしょう。
辞任後の5年間は、衆議院・参議院の関係なく、比例区名簿には入ることができないような仕組みです。
このような規定があれば、事実上、ローテーションは不可能になります。
一方で、選挙区選挙への鞍替えは、制限しません。
元々、そんなに重大な問題ではないので、厳しく制限しても意味がありません。
『5年間』は長すぎるかもしれません。

『小選挙区制の改正』をテーマに検討していますが、比例代表制自体も検討していきます。
その際に、この辺りの問題も、再検討することになると思います。


なお、れいわローテーションですが、ローテーションを約束して参議院議員になった方は、1年後に辞職するのでしょうか。
もし、辞職しなかった時、党はどのように対応するのでしょうか。
ローテーションしないだけで辞めさせることは、法的な根拠はありません。
辞職を無理強いされたら、離党しても良いのです。

どうなるのか、ちょっと見ものですね。