食糧自給率の向上を掲げ、当ブログを始めたのは、9年余り前でした。
今回のような小手先の食糧安全保障では問題になりませんが、本格的に食糧安全保障を考える際には、仮想水が大きな課題になってきます。
政府は、仮想水にも触れていないので、それほど本気ではないのかもしれません。
苦節9年、ついに、政府が一歩を踏み出しました。
まぁ、ここまで何歩も後退しているので、ようやく踏み止まった程度ですが、大きな変化には違いありません。
政府は、食糧安全保障の観点から、農産物や肥料の海外依存を下げることを決めました。
主な目標は、次の4点です。
・小麦の生産面積を、2021年比で9%拡大する。
・大豆の生産面積を、2021年比で16%拡大する。
・化学肥料の使用量を、2021年比で20%削減する。
・食品ロスを、2000年比で半減させる。
これを実現するために、以下のような対策を行います。
・水田から畑作への転作を進める。
・生産施設を整備する。
・化学肥料から堆肥へ転換を進める。
内容は、やはり「踏み出した」と言うより、「踏み止まった」くらいですね。
小麦の自給率(2020年)は、13%です。
これを9%向上させても、14%(小数を四捨五入)にしかなりません。
人口に換算すると、約150万人分の増産に相当します。
ですが、1億900万人分も不足したままです。
大豆の自給率(2017年)は、7%です。
ただし、油糧用の消費が多く、食用に限定すると、自給率は25%だそうです。
国産大豆は、全量(種子分を除く)が食用に回されます。
増産分を全て食用に回すと、自給率は29%に向上します。
人口に換算すると、約500万人分に相当しますが、9000万人分が不足します。
はっきり言って、焼け石に水のレベルです。
基本は転作なので、食糧自給率は、ほとんど変化しないでしょう。
休耕田の活用や、農地から住宅地や工業用地への転用の制限も、強化しないようです。
肥料は、手間のかかる堆肥への転換としている点でも、疑問があります。
化学肥料の国産生産のための研究に、全く力を入れていません。
化学肥料の原料を、海水から安価に抽出する、あるいは海底資源から採掘する研究・開発には、一銭も出さないようです。
完全に見落とされているのが、種子です。
種子法の改悪といった売国奴のような政策をしてきた政府ですから、食糧安全保障における種子の重要さは、全くわかっていないのでしょう。
種子の研究には、国家戦略として進めていくべきものです。
今回のような小手先の食糧安全保障では問題になりませんが、本格的に食糧安全保障を考える際には、仮想水が大きな課題になってきます。
政府は、仮想水にも触れていないので、それほど本気ではないのかもしれません。
食糧安全保障やエネルギ安全保障は、武器と違い、数年で倍増させることはできません。
だから、優先順位を上げて、長期で段階的な計画を策定するべきなのです。
当ブログでは、2100年を目標に、食糧生産量の倍増を考えています。
2100年の日本の人口を、6000〜8000万人とし、食糧自給率を100%にするのです。
政府の食糧安全保障のレベルは、「食糧安全保障も考えています」と主張したいだけのようにも見えます。
だから、2030年までしか、設定していません。
内容もお粗末です。
防衛予算倍増に加えて、食糧価格高騰で対比されることが増えた食糧安全保障について、「こちらも忘れていない」とのポーズのために出すのでしょう。
政府にはポーズであっても、何とか持続的に食糧自給率の向上を目指したいものです。