小笠原海溝で、道林克禎氏が日本人としての潜水深度記録を更新しました。

記録は、9801mです。
8月13日11時のことでした。



これ以前の記録は、1962年7月25日に、択捉島の南東沖の海溝で、佐々木忠義氏がフランスの『アラシメード(アルキメデス)号』に同乗し、潜水した9545mが記録だそうです。

元々、潜水技術は別格とも言えるフランスですが、60年も前に、9545mまで潜れる潜水艇を他国の研究者に提供していた実力には、感心します。
フランスは、『トリエステ号』でマリアナ海溝の最深部まで潜航しています。
同時期に、10000m級の潜水艇を2艇も所有していたことに、驚かされます。

フランス+海と言えば、私は、クストーとプレコンチナン計画が浮かびます。
これを追いかけるように、日本はシートピア計画を掲げましたが、三段階目は中途半端になり、完遂していません。



さて、何を悔しがっているかと言うと、今回の潜水記録も、外国籍の潜水艇に同乗しての記録だからです。
使われたのは、アメリカの二人乗りの潜水艇『リミティング・ファルター号』です。
この潜水艇は、トライトン社が運用する潜水艇で、DSSVプレッシャードロップ号を母船としています。
この潜水艇は、2人の乗員が乗る耐圧区画が、艇体の中央に横向き(左舷向き?)に取り付けられています。中々、ユニークなデザインの潜水艇です。

悔しいのは、『しんかい12000』の建造が、まだ始まっていないことです。
当ブログでは、4年前には『しんかい12000』計画に触れています。
その『しんかい12000』は、当初の予定なら、来年には就航していたはずです。
ですが、その建造費用は、F35Bの運用開始を控える『いずも』と『かが』の改造費に、消えてしまうようです。


もう一つ、悔しいことは、小笠原海溝の深さが、従来から言われていた9780mではなく、9801mであることが、今回の潜水でわかったことです。
日本の専管水域内なのに、水深もわかっていなかったとは、情けない気持ちになります。
しかも、他国の技術でわかったとは、情けなさも倍増です。 

水深9800mは、軍用の潜水艦には無縁の深さです。
潜水艦は、精々1000m程度しか潜水できません。なので、軍事大国を目指す日本政府にとって、1000mを超える水深には、全く関心がないのでしょう。



こんな国だから、今や、引用論文数は、人口比でも中国に先を行かれるようになってしまったのです。(中国の引用論文数は、日本の10倍以上!)

こんな国、莫大な防衛費を費やしてまで、守る価値が残っているのでしょうか。


そんな気分になった1日でした。