JAMSTECの『かいれい』が、2月1日をもって運用を終了したそうです。

『かいれい』は、1997年の竣工ですので、船齢24年でした。

老齢船の明確な定義はありませんが、私の記憶では、船齢が20年以上の船を老齢船としていたはずです。
船舶保険では、船齢が15年以上を老齢船としているようです。
いずれにしても、『かいれい』は、老齢船に分類されます。

ですが、JAMSTEC所属の船でも、他にも老齢船はあります。
『よこすか』は、1990年の竣工です。
『みらい』は1997年の竣工ですが、前身の原子力実験船『むつ』としては、1969年に進水しています。
『しんかい6500』も、運用開始は1991年です。
日本郵船のクルーズ客船『あすか2』も、前身の『クリスタル・ハーモニー』の竣工は、1990年ですが、まだまだ元気です。

『かいれい』の引退は、船齢も関係あるでしょうが、予算の縮小が原因のようです。
自民党版の『事業仕分け』ですか?
今後、売却されるそうです。

別の背景として、『北極域研究船』の新造もありそうです。
『かいれい』の3倍近い大型船で、砕氷能力も、厚さ1.2mの1年氷の連続砕氷が可能になる見込みだそうです。(PC4)
(北極域研究船の詳細はこちら→https://m.youtube.com/watch?v=EHrg_7KmBZo )

ただ、この船は、『みらい』が担っている役割を代替します。『みらい』の船齢を考えると、『北極域研究船』が竣工すれば、『みらい』は、引退するはずです。
となると、『かいれい』の引退は、やはり予算不足が要因のようです。


2019年4月のF35墜落事故では、『かいめい』が捜索に協力し、FDR(Fright Data Recorder)の発見等の成果を上げています。
この年のJAMSTEC相模原本部の一般公開は、例年の5月から11月に変更されています。
一般公開に向けて、『かいめい』の航海日程に数日の空きがあったのでしょう。機能的にも都合が良い『かいめい』を、F35の捜索に振り向けたと想像します。

このように、JAMSTECは、対極となる防衛部門にも協力してきたのです。
それなのに、『かいれい』の運用を続けられないくらいに予算を絞られるとは・・・
『かいれい』の利用単価は、約700万円/日です。単純計算で年間25億円余りです。
F35Bの単価が約130億円と言われていますから、1機諦めれば、『かいれい』の5年分の運用費が捻出できます。交換部品購入費や運用費を含めれば、『かいれい』が動かなくなるまで運用できそうです。


最近の政府は、大きく右傾化しているように感じます。
産業化が容易な分野を除くと、研究費は削られています。

『北極域研究船』は、建造費で300億円、30年間の運用費も含めると1155億円と見積もられています。
建造目的の中には、北極航路の開拓や、将来的な潜水艦の活動のために、海底地形の詳細を知ることも含まれていると、想像します。
もちろん、中心となる活動目的は、極地の気象観測と地球温暖化の研究です。経済利用や外交カードとして気候変動等、政府に予算を要求しやすかったのでしょう。

一方、『かいれい』は、地震予知は不可能との考えが一般化し、地球物理学への関心が下がってしまったのでしょう。
先に立案されていた『しんかい12000』の計画も、全く進んでいません。
『北極域研究船』とは、対照的です。

実は、私は『しんかい6500』とは、ちょっとだけ縁があります。(詳しくは秘密)
それゆえ、JAMSTECが大好きな私には、寂しい現実です。