(3)制御不能の発電力

再生可能エネルギーの弱点で致命的と言えるのが、任意の出力を出せない点です。

地熱発電は、年間を通じてほぼ一定の出力を得られますが、埋蔵エネルギーは小さく、出力調整によって他の再生可能エネルギーの変動を吸収することは無理です。

海洋温度差発電は、現時点では実用化していませんが、規模の面で他の再生可能エネルギーの変動を吸収できる可能性はあります。

ただ、海水温が低い時期は発電そのものができなくなります。

水力は、規模の面でも、応答性の面でも、再生可能エネルギーの変動をある程度まで吸収できるのですが、現実には電力需要の変動もあるので、全てを吸収することはできません。

 

蓄電を利用することで問題が解決すると思う方も多いのではないかと思います。

しかし、現実は厳しいのです。

例えば、太陽光発電で全てを賄う場合を考えてみましょう。

日照時間が長い夏場の電力を電力消費が多い冬場まで蓄電しなければならないので、その量は莫大なものになります。

 

2015年度の日射量から太陽光発電量を計算し、販売電力量との関係から、月単位で蓄電によって翌月に繰り越さなければならない電力量を計算したところ、10月頃には年間消費電力の14.3%の電力量を蓄電していなければならないことが分かりました。

日本全体では、約8000億kWhが消費されるので1200億kWh近い蓄電量が必要となります。

1tの蓄電池で蓄電できるのは約100kWhなので、蓄電池の総重量は約12億tになります。

電池寿命が10年とすると、年間1億2000万tの蓄電池を製造、同量を処分することになります。

原油の輸入量が2億t/年を切る中、製造と処分を合わせて毎年2億4000万tの蓄電池を扱う感覚が、私にはイメージできません。

一般家庭の年間消費電力量は約7000kWhなので、約10tの蓄電池が必要になります。乗用車10台分の重量です。

 

もちろん、他の再生可能エネルギーとの併用や、揚水発電による蓄電により蓄電池に頼る部分は減るでしょうが、仮に10分の1になったとしても、ゾッとします。

少なくとも、『蓄電すれば解決!』というような簡単なものではないことが分かると思います。



実は、火力発電所を停めたい私にも、この問題は頭が痛いのです。