気象予測をテーマの一つに掲げる私の関心は、気象シミュレーションに集まりがちでした。
気象予測は、気象シミュレーションのような大規模なものではなく、期間・地域・精度を
限定することで、パソコンで中・長期の気象を予測することを目的としています。
ですので、気象シミュレーションの成果と課題には、強い関心があるのです。




まずは、「氷河期ってどんなとき?シミュレーションでわかること」から。

ここでは、シミュレーションの強みを活かして、氷河の影響の有無を検証していました。
寒冷化で氷河が発達すると、地球の反射能が高くなるので、暖まり難くなります。
当然、気温は低くなります。
氷河の発達を考慮せず二酸化炭素濃度(氷河期は現在の半分程度)のみで計算した場合と、氷河の発達も考慮した場合では、それぞれ約4℃と5℃の低下になるそうです。
これは、温暖化においても、氷河の後退や極地の棚氷・海氷の減少が影響を大きくすることを意味しています。(いわゆるアルベド効果)

もう一つ、前回も触れた真水の流入です。
『ザ・ディ・アフター・トゥモロー』の舞台背景にもなったカナダ沖への真水の流入を、
シミュレーションされていました。
カナダ沖は、深層海流の沈み込み海域の一つとされ、これが北半球の戻り氷期の原因と
見られています。
シミュレーションでは、真水の流入が500年間も継続する設定で計算していましたが、
北半球で気温が低下する現象が見られました。
私が着目したのは、真水の流入に対する気温の反応です。
記憶に基づくので正確ではありませんが、気温の低下は真水の流入直後から始まりますが、気温の上昇は真水の流入が止まってから100~150年くらい遅れることです。
このシミュレーション結果は、将来的に地球温暖化の対策が行われたとしても、気候が元に
戻るまで長い時間がかかる危険性があることを示しているように思いました。


逆回転シミュレーション
https://twitter.com/JAMSTEC_PR/status/929240505686245377
地球の自転を逆に回した場合のシミュレーションでは、海流や気象が安定するまで500年くらい必要だと教えていただきました。
先程の『氷河期~』のシミュレーションでの例も踏まえると、新しい気候へと遷移する場合
安定するまである程度の時間がかかるようです。
温暖化が気候の遷移を意味するなら、今後、気候が不安定化していくのではないかと、私は危惧しています。


では、なぜ気候は不安定になるのでしょうか。
素人研究者の私は確たる根拠を持っていませんが、一時的に熱塩対流が停滞するためでは
ないかと、考えています。
熱塩対流が停滞すると、浅海と深海が熱的に切り離されたような状態になり、海洋の熱容量が減ってしまうと考えられます。
このような状態にある時に何らかの要因で気候がブレた場合、その変動を吸収しきれずに、極端な気温の上下動を起こすことになります。

数百年が経過すると、氷河が消失することで真水の流入が減少したり、二酸化炭素濃度の
上昇が頭打ちになることで、熱塩対流は徐々に回復するのでしょう。熱塩対流の回復は、
見た目の熱容量の回復であり、気候も安定していくのだろうと、推定しています。

氷河期~』のシミュレーションでは、真水の流入で一時的に北半球は寒冷化しましたが、南半球ではやや温暖化していました。これは、北半球に陸地が多く、南半球には少ないことが影響しているのではないかと思います。
陸地は、海より熱容量が小さいので、北半球は南半球より熱容量が小さいと見なせます。
元々、北半球と南半球の大気は入れ替わりが少なく、北半球の影響が南半球に伝わるまで
時間がかかります。
なので、北半球の気候変動を南半球でカバー出来ないのです。
南北の気温の差は、ここに要因があるように思います。




さて、こうなると、シミュレーションの結果が気になります。
そこで、シミュレーションで気候の不安定化の兆候が現れていないか、質問してみました。
残念ながら、そのような観点でのシミュレーション結果をチェックしたことはないらしく、シミュレーション内で気候の不安定化を確認することはできませんでした。



シミュレーション関係の最後は、シミュレーションの再現力です。

別の機会にも書いていますが、シミュレーションを行う上で、有効桁数は問題になります。
複雑な計算をする毎に有効桁数は減っていき、場合によっては有効桁数は無くなってしまうこともあります。
そのようなシミュレーションは、結果を信用することができません。

そこで気になるのが、
マッデンジュリアン振動エルニーニョ/ラニーニャがシミュレーションで再現できたのか?
という点です。
キチンとシミュレーションできていたのなら、マッデンジュリアン振動やエルニーニョ等も
再現できるはずです。

くぅー!
無念!


研究者に質問するのを忘れていました。
当日に思いつかなかったのなら諦めるのですが、セミナーを聞いていた時には、
「そうだ! マッデンジュリアン振動の再現は?」と思っていたのです。
来年こそ、聞こうと思います。


JAMSTEC横浜研究所は、地球シミュレータがあるせいか、シミュレーション系の展示が多くありました。
私個人が期待する研究としては、温暖化のシミュレーションにおいて、気候の不安定化が
起きるのか否かをテーマにした研究を見てみたいと思っています。
その研究を行うためには、『気候の不安定化』の定義から始めなければならないでしょうし
シミュレーションの有効桁数の問題も、ハードルの一つになるのかもしれません。

そのあたりをクリアし、私たちに未来を見せて頂きたく思っています。