再生可能エネルギーによる発電を増す際に最も問題になるのが、電力安定化です。
従来は、電力会社が需要に合わせて発電量を制御し、電力の需給バランスを保ってきました。このバランスがキチンと保たれているから、供給される電気の周波数が一定に保たれているのです。
しかし、再生可能エネルギーの多くは、風まかせ、お日様まかせですから、需要に加えて供給も変動します。更に、電力自由化により、多くの発電事業者が参入することになり、これまで以上に電力の需給バランスを保つことが難しくなっています。
このような状態のままでは、電力系統の周波数が変動し、最悪は、発電機が次々に脱調を起こして切り離され、大規模な停電となる危険性があります。
実際、1987年7月23日に、静岡東部、神奈川西部、山梨中央部、埼玉南部、東京多摩、荒川区、足立区、文京区、北区が停電する事例が発生しています。
この時は、280万戸が最大3時間20分余りに渡って停電しています。
 
再生可能エネルギーや電力自由化によって生まれる電力の需要と供給の乖離を埋めるためには、自由かつ応答性に優れる発電設備を充実させる必要があります。
従来は、主として水力発電所がその役割を担ってきましたが、需要の変動分に加え、供給の変動分まで吸収することは難しく、新しい発電設備の開発が期待されていました。
現時点では、蓄電池が有望と考えられていますが、新たにフライホイール蓄電システムが開発されることになりました。
 
 
フライホイール蓄電システムは、電力を大きな弾み車の回転運動として貯蔵し、必要な時に回転力を再び電力に変換します。
このフライホイール蓄電システムとしては世界最大級の出力=300kW、蓄電容量=100kWhの実証施設が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、山梨県企業局等によって山梨県米倉山に完成しています。
山梨県が運営する米倉山大規模太陽光発電所と電力系統につないで、変動の大きい再生エネルギーの安定的利用に向けた実証試験が行われています。
 
システムの特徴は、イットリウムを含む高温超電導線材を用いた超電導磁石が軸受けとして使われていて、重量4t、直径2mのフライホイールを超電導磁気軸受けが非接触で支えています。
フライホイールは浮上しているため、大型のフライホイールを毎分6,000回転という高速で動かしても、長期間の安定運用が可能になりました。
また、フライホイールを高速回転させると、強い遠心力が働くため、大径化が難しいとされていましたが、FRP製のフライホイールで炭素繊維の織り方を工夫することで直径2mまで大型化することに成功しました。
 
 
フライホイール蓄電システムの実証施設は、米倉山太陽光発電所(出力10000kW)と、山梨県が建設した米倉山実証試験用太陽光発電所(出力1002.6kW)に接続され、日射量などで変動する太陽光発電を安定した電力にして電力系統に送る試験が実施されます。