「MRJは駄作機か?」と問われたら、私は「YES」と答えたいですね。



多くの民間航空機は、標準型を元に機体のストレッチ(伸長型)を行いながら発展させていきます。

同時に、燃料タンクを拡大して、航続距離も伸ばしていきます。

その典型が、ボーイング737型でしょう。

 

737型の初飛行は、50年以上も前の1967年です。

その後、改良を繰り返し、最新のMAX10では、定員230席 全長43.8mにもなる予定です。

では、50年前の標準型は、どんな機体だったのでしょうか。

737型は、727型を基に、三発から双発に変えて小型化し、未舗装の空港を含む地方空港にも就航できる機体として開発されました。エンジンと外翼、機首は727を流用し、胴体の中央付近を短縮しつつ利用し、内翼、降着装置、尾翼等を再設計して完成しました。

このように、急増と言っても良いくらいの機体でしたが、基の727型が廃止になった後も737型は発展を続け、現在に至っています。


 

では、MRJは、737型と同じように、発展させていける可能性はあるのでしょうか。

その前に、MRJと737のそれぞれの標準型にあたるMRJ-70と737-100との比較をしてみましょう。


       MRJ-70    737-100

 定員       76席      115席

 全長     33.4m     28.7m

 重量     40.2t     49.9t

 翼長     29.2m     28.4m

 翼面積    100m²?      102m²  

 推力     7.1t×2基    6.4t×2基

 航続距離  3740km     3000km    


MRJと737は、全長と翼幅はMRJが、最大離陸重量は737がやや大きいくらいで、大差はありません。大きく異なるのは定員で、MRJの76席に対し、737は115席程度となっています。

この違いの一つは、胴体の太さにあります。MRJの座席は2+2の4列ですが、737は3+3の6列です。

意外なのが、両機種の縦の座席数です。MRJは76÷4で縦19席ですが、737は115÷6で縦20席以上です。

MRJは737より4.8mくらい長いので、5〜6列くらい長く取れるはずですが、実際にはほぼ同じ列数しか確保できていません。

その要因は、客室内にバゲージスペースがあるためだろうと思います。

MRJは胴体が細く、床下収納を削っています。そのため、客室後部にバゲージスペースを確保しています。この容量が、5〜6列分(20〜24席分)に相当するようです。

 

MRJは、70型と90型の2種類があり、将来的には3列程度のストレッチ型(100型?)も用意する予定があります。
胴体をストレッチする場合、胴体の太さ(正確には縦の寸法)が利きます。
その指標をみるために、胴体径と全長を確認しましょう。(MRJ-100は推定値)

        ---  MRJ  ---       --  737  --
       70     80    100      100    900
胴体径  2.96m  2.96m  2.96m    3.76m  3.76m 
全長   33.4m  35.8m  37.0m?   28.7m  42.1m
縦横比 11.284 12.095 12.500    7.633 11.197

737-900型の縦横比は11.197ですので、最も短胴の70型でも737型で最も長い900型と同程度の縦横比と分かります。機体のストレッチの余地は、ほとんど残っていないと言えそうです。

 

MRJは、ストレッチの余地を減らしてまで胴体を細くして、空気抵抗を減らすことを優先しました。
ところが、胴体が細すぎて中央翼を胴体内を貫通させることができず、胴体下に張り出しています。
胴体は細くても、機体全体としては細くないのです。

キャビン内の通路の高さを確保するために、中央翼は下に押し出される形となっています。

また、主脚のダブルタイヤを収納するスペースを確保するために、中央翼には一定以上の厚みが必要になります。その厚みは、1.5m以上になるはずです。キャビン内の通路床面から胴体外壁最上部までを2.0mを確保すると、中央翼の下面は、胴体最下部より70〜80cmははみ出すことになります。

MRJの胴体下部の張り出しは、ちょうどこのくらいです。

航空機は、少し迎角をとって飛行するので、この張り出しの前面投影面積への影響は小さいかもしれませんが、無用な気流の変化を生むので、胴体を細くしたメリットは小さくなると思われます。

 

私なら、胴体径を大きくして、5列か6列のシート配置にします。

こうすれば、床下収納庫を確保できるので、実質的なキャビンを長く確保できます。

また、床下収納庫に潜り込めるので、床下に配置する配線や配管のメンテナンスも容易になります。

胴体を延長する際に、胴体の縦のサイズが関係します。
将来的に、ストレッチ型を開発する際に、細い胴体は早く限界に達してしまいます。

胴体を太くするメリットは、細くするメリットを上回るように思います。

 

MRJの推力は、離陸重量に対して大きめです。

MRJの離陸重量と推力の比は、70型は0.353、90型は0.374です。一般的な比率は、0.3±10%くらいです。実際、737-800は0.314です。

737型が乗用車なら、MRJはスポーツカーのようです。

これは、上昇力を稼いで、空港周辺の騒音を減らす設計思想と思われます。

一理あるのですが、経済性はどうなのか、疑問があります。

MRJの燃費は、最良に計算してMRJ-90型で0.311km/lです。

737-800型は、0.217km/lですが、定員が2倍以上も違うので、比較対象が悪いとも言えます。例えば。一人あたりの燃費を計算してみると、MRJ-90型は27.4km/l・人、737-800型は41.0km/と、MRJの方がかなり悪いことがわかります。

ちなみに、MRJのライバルとされるエンブラエルのE175-E2の燃費は分かりませんでした。

私なら、もう少し小型のエンジンを選択したと思います。
少なくとも、MRJ-70の開発を中止し、MRJ-70用のエンジンをMRJ-90に採用したと思います。


MRJの開発は、定員数を決めるところから始まったのではないかと思います。

ニッチを見極めて、定員数を決めたのでしょう。

ところが、エンジンを決める際に、ギヤードタービンの新型エンジンに目が行き、無理矢理採用してしまったのではないかと想像します。
機体の基本構想が甘く、トレンドだけを追い、その結果、全体のバランスを欠いた機体になったのではないかと思っています。

他にも、各部を仕上げる技術者の半数は、海外の人材を登用しているようで、開発のノウハウが企業内に残るのか、不安でもあります。


色々な角度から見ても、MRJは駄作機のように、私は思っています。



MRJの開発の問題は、将来を見据えていないことにあるように思います。
MRJの胴体は、本来は50~60席がベースになるサイズです。
一方、エンジンは、倍の120席クラスの機体を飛ばすこともできる強力なものです。
また、内翼も、エンジンと胴体のクリアランスを考えると、小型化は難しいでしょう。

737の開発から分かるように、改良でも新規開発でも、従来機の機種・胴体・外翼を流用することが少なくありません。初期においては、エンジンを流用する事もあります。
ですが、MRJの後継機を開発する際、胴体を考えると更なる大型化は考えにくいところです。
といって、機体の小型化は内翼が問題です。
胴体を細く作ったことで、MRJを今回のみの機体にしてしまったのです。

このような角度から見ても、MRJは駄作に思えてしまいます。


メディアは、ナショナリズムからMRJを持ちあげますが、国家衰退の空気が流れている気がします。