本日(2019年5月19日)をもって、国際キログラム原器が引退します。

国際キログラム原器は、1kgの基準となる円筒形の錘です。
日本国キログラム原器
(産総研より https://unit.aist.go.jp/riem/mass-std/

日本にある日本キログラム原器は、フランスに保管されている国際原器(1885年製作)から作られた複製です。
複製は、1885年から1889年頃に40個が製作され、1890年(明治23年)にNo.6、30、39の3個が日本に配布されています。
3個が配布されたのは、補正を行うためで、主原器No.6と副原器No.30、39として使用しました。
GHQ統治下の1947年に、副原器No.39を、後の韓国に譲渡しています。
その後、1963年にNo.E59を新造して実験用とし、2009年9月には原器No.94を新規に購入しています。

ちなみに、国際キログラム原器を保有する国は、以下の国々のようです。

 No.2  ルーマニア
 No.5  イタリア
 No.6  日本
 No.12 ロシア
 No.16 ハンガリー
 No.18 イギリス
 No.20 アメリカ
 No.21 メキシコ
 No.23 フィンランド
 No.24 スペイン
 No.35 フランス
 No.36 ノルウェー
 No.37 ベルギー
 No.38 スイス
 No.39 韓国
 No.40 スウェーデン
・・・・・・・・・・・・・・・
 No.44 オーストラリア
 No.46 インドネシア
 No.48 デンマーク
 No.49 オーストリア
 No.50 カナダ
 No.51 ポーランド
 No.53 オランダ
 No.54 トルコ
 No.55 ドイツ
―――――――――――――――
 No.56 南アフリカ
 No.57 インド
 No.58 エジプト
 No.60 中国
 No.65 スロバキア
 No.66 ブラジル
 No.68 北朝鮮
 No.69 ポルトガル
 No.71 イスラエル
 No.75 香港

(以上、THE THIRD PERIODIC VERIFICATION OF NATIONAL PROTOTYPES OF THE KIROGRAMより抽出)
 リンク⇒https://www.bipm.org/utils/common/pdf/3eVerificationkg-EN.pdf


これらは、過去の遺物に変わります。
今後は、プランク定数を基に定められることになります。

まず、アボガドロ数(1mol当たりの分子数)を基に、プランク定数を1億分の2.4の精度で決定しました。
 h=6.62607015×10E-34 Js

Js は、kgm²/s とも記述できます。
『1m』は、『光が真空中を1秒間に進む距離の299,792,458分の1』と定められています。
『1秒』は、『非摂動・基底状態にあるセシウム133原子の超微細構造の周波数ΔνCsの数値を正確に9,192,631,770』と定められています。
これらから逆算することによって、キログラムを正確に表すことができるのです。

新しいキログラムの定義の基になったプランク定数の精密な測定などは、ドイツ、アメリカ、カナダ、フランス、そして日本が貢献したそうです。



ついでに、単位系の話をしておきましょう。

今回の国際キログラム原器の話題は、SI単位系の中の重さの定義に関わる部分です。
SI単位系は、簡単に言えば、メートル法の発展形です。
これとは別に、マックス・プランクによって提唱された自然単位系があります。
プランク単位系では、物理定数の値を1として定義します。
そのため、物理学の方程式の単純化が可能である利点があります。
また、地球由来や人間由来の部分がなく、宇宙のどこの生命体でも理解することができるとして、注目されています。

私のようなエンジニアにとっては、SI単位系が中心ですが、世の中にはおかしな単位系の用いられ方をしている分野もあります。
その代表格がタイヤでしょう。
タイヤの内径や、ホイールのリム幅は、ヤード・ポンド法のインチで表現され、トレッド幅や速度記号はSI単位系が基準となっています。

世の中、色々あるようです。