昨年12月、NGO団体『ペシャワール会』の医師である中村哲氏が、アフガニスタンで人道活動中に殺害されました。
状況から見て、中村氏と知った上での犯行のようです。
しかし、現時点でも、犯行声明はでていません。
それどころか、アルカイダは「犯行は自分達ではない」と態々に発表しています。中村氏は、アフガニスタン国民に慕われており、その人物を殺害したとなると国民の反発を買うためと思われます。
アルカイダでさえ敵に回したくない人物が、中村哲氏だったと言えます。


中村氏らの活動は、日本が果たすべき国際貢献のあり方を示していると思います。
武力で入れば、敵対しているとみなされ、武力で返されます。
しかし、真に人道活動をすれば、人心は集まってくるのです。人心が集まれば、敵対勢力でさえ一目置くことになります。

こう書くと、綺麗事のように聞こえるでしょう。
ですが、20世紀後半の日本は、このスタイルで国際貢献をしていました。
戦乱で荒れた国々を復興させるために、日本は予算を組み、支援を続けてきたのです。
問題が無かったわけではありませんが、現地民からは概ね歓迎される支援でした。

では、なぜ日本が国際貢献の中心をPKOやPKFへと舵を切ることになったのでしょうか。
その背景の一つに、欧米各国の不満がありました。
「汚れ仕事(軍事行動)は我々にやらせて、日本は美味しいところ(現地民の支持と資源)を持っていく」との不満でした。
一理あるのですが、では、なぜ欧米各国は汚れ仕事をやめないのでしょうか。
各国は、敵対勢力を潰すために武力を使います。自分達に好意的な政権や組織に武器を売ります。
また、援助が自分達に非協力的な組織や集団を潤すことを嫌がるためです。
こうして、自分たちに近い政権を作り、影響範囲を広げていくことで、そこにある資源と市場を得ようとしているのです。
国益のために、汚れ仕事をしているのです。

国益が似る日本は、憲法を盾に汚れ仕事を回避してきました。それが、欧米諸国には不満だったようです。

一方で、欧米各国の汚れ仕事は、目先の国益には叶うかもしれませんが、長期のビジョンでは問題を起こすことが度々あります。
例えば、武器を輸出した国で政変が起こり、自らの武器で攻撃されたこともありました。また、フォークランド戦争でイギリスを攻撃したアルゼンチンの兵器は、フランス製でした。
ただ、このような結果においても、無傷で利益を得る人々もいることも忘れてはならないでしょう。そのような人々を潤すために、我々庶民は命を賭けて汚れ仕事(戦争を含む)をさせられるのです。


さて、中村哲氏ですが、彼が率いるペシャワール会は、アフガニスタンの65万人の生活を支えていると言われています。NGOなので、資金は僅かでしょう。それでも、これだけの支援ができるのです。
現地における中村氏の信頼は絶大だったことが、日本に居ても伝わってきます。アフガニスタン国旗で包まれた棺を大統領が自ら担いだのです。
日本で、天皇陛下なり首相なりが、日本で亡くなった外国人の棺を持ったことがあるでしょうか。それも、個人の資格で入国していた外国人です。
中村哲氏にはそれだけの貢献があり、多くのアフガニスタン人が、それを知っていたのです。

中村哲氏ではありませんが、日本が海外の支援活動を行う際、平和憲法が武器になる場合があるそうです。
現地での信頼を得るために、武器を持っていないことを説明します。しかし、外国から武器や武力によって多くの同胞を失った人々は、容易に心を開きません。
その際に、「日本は憲法によって外国で武力を使うことを禁止されている」と説明し、並行して非営利の援助を行っていくと、次第に信頼するようになってくれるのだそうです。

中村氏自身の活動でも、似た経緯があったそうです。
元々、アフガニスタンでの活動に使用していた車には、日章旗が書かれていました。それは、自分たちが日本のNGOであって攻撃の意思がないことを示すことが目的であると同時に、自分たちへの攻撃を避けるためでもあったそうです。
ところが、日本が多国籍軍への補給活動を始めたため、日章旗が攻撃の的となる危険性が高まり、車の日章旗を消したのだそうです。
憲法改正は、このようなNGOの活動にマイナスの効果を生む可能性が高いのです。

紛争地で平和が訪れないのは、貧困と無教育が大きな要因です。それに気付いた中村氏は、医療活動から農業振興に舵を切ったのです。
どんなに武力を用いても、貧困は無くなりません。
貧困の最大の要因は、教育の不備です。
次に、国土の荒廃です。特に、農業や水産業の衰退が住民の飢えに繋がり、地元から溢れた人々の怒りが、彼らを戦闘員へと導いていくのです。
これが、紛争を長引かせるのです。
ここを断ち切ることが大切であり、中村氏が心血を注いだのも、この部分だったのです。


さて、2100年の日本のあるべき姿を考える上で、中村哲氏の続けてきた事柄は、参考になると思っています。
国の基盤は農業や水産業です。
ここが揺らがないようにすべきです。
地球温暖化が止まりそうにない現状を踏まえると、今から農水業に注力していくべきです。
当ブログでは、人々の考え方の中に、国の基盤は何かを加えていく活動を行っていきたいと考えています。

これをもって、当ブログの新年の挨拶とさせて頂きます。