「鳥はなぜ空を飛べるのか?」
こう問いかけると、色々な答が返ってくるでしょう。
代表的なものは、「翼があるから」です。
「体が軽いから」というのもあるでしょう。
ちょっとトリビアな話をするなら、鷹匠が野生の鷹を捕まえる方法があります。
鷹匠は、捕まえようと思った鷹に餌を与えます。餌は、大量に与えます。すると、餌を食べ過ぎた鷹は体が重くなり、地上からは飛び立てなくなるのです。
「飛べない豚はタダの豚だ」というセリフもありましたが、「飛べない鷹はタダの豚だ」と言いたくなります。(豚さん、ゴメンナサイ)
飛べなくなった鷹を鷹匠は捕まえるのです。

閑話休題
鳥が空を飛べるのは、翼があり、軽い体を持つからですが、それ以外にもポイントがあります。
ですが、今回は呼吸器を考えてみようと思います。
それを考えていくと、人類が最も進化した動物とほ思えなくなるかもしれません。


人類も鳥も、脊椎動物です。
脊椎動物は、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に分類されます。
この中で、陸海空の生活圏で分類すると、次のようになります。

 魚類 :水中
 両生類:水中、陸上
 爬虫類:水中、陸上
 鳥類 :陸上、空中
 哺乳類:水中、陸上、空中

上記は、微妙な部分はあります。
例えば、鳥類のペンギンは、水中で給餌します。
私の個人的な分類で、明確な線引きはできていません。
生涯を水中で過ごす鯨の海棲は、文句なしでしょう。微妙なのは、爬虫類と鳥類の海棲です。
ペンギンもウミガメも、卵を陸上で産むのは同じです。ですが、ペンギンは睡眠を陸上でとりますが、ウミガメは水中でとります。生涯のほとんどを海で生きるウミガメに対して、ペンギンは給餌以外を陸上で過ごします。なので、私は、ペンギンは海棲とは分類しませんでした。
空中についても、魚類にはトビウオ、爬虫類にもトビヘビがいます。しかし、自由に飛ぶのではなく、滑空に相当します。旋回や上昇はできず、空中での給餌もしません。
これに対して、鳥類やコウモリは、自由に旋回や上昇を行い、空中で給餌します。

やっと、本題です。
脊椎動物で、自由に空を飛べる種があるのは、鳥類と哺乳類だけなのです。
なぜでしょうか。
なぜ、翼を持つことができたのでしょうか。
爬虫類が翼を持っていれば、自由に空を飛べたのでしょうか。
爬虫類に翼があっても、おそらく自由に空を飛ぶことはできなかっただろうと、私は考えています。

毎年夏に琵琶湖で行われる鳥人間コンテストを御存知の方は多いでしょう。
人力機部門は、正に鳥のように飛び、旋回もしますが、エンジンを兼ねるパイロットは必死です。工夫された機体でも、飛行には強靭な体力を必要とすることがわかります。
同じ体重であれば、爬虫類は哺乳類の10分の1の代謝しかありません。爬虫類は、瞬間的には力を発揮できても、それを連続できません。
爬虫類が鳥人間コンテストに出場したなら、プラットフォームを飛び出す頃には息が上がっているでしょう。
だから、爬虫類には、トビヘビのように滑空する種しかいないのでしょう。

では、哺乳類や鳥類は、どうでしょうか。
どちらも高い代謝機能を持ちます。
代謝は、食糧の燃焼ですから、大量の酸素が必要になります。自動車で言えば、大排気量エンジンです。燃料消費も多いのですが、大きなパワーを出せるのが魅力です。
問題は、大量の酸素を取り込む方法です。
哺乳類は、肋膜に加えて横隔膜を発達させ、肺胞の換気効率を高めました。
鳥類は、気嚢を持ち、常に新鮮な空気が肺を通過する呼吸器としました。これは、肺胞内の空気を完全には入れ替えられない哺乳類の呼吸器よりも、効率が高いとされています。
鳥類が空を飛べる決定的な要因は、翼を持っていることより、優れた呼吸器を持っているからかもしれませんね。

もちろん、鳥類が空を飛べる理由は、他にも数多くあります。
中空の骨、眼球の固定や嘴による軽量化、気流を整える羽毛等々。

ここで、気になることが二つあります。
一つは翼竜です。
もう一つは昆虫です。
どちらも、空を自由に飛びます。

まず、翼竜です。
最大の翼竜は、翼長こそ10mと大きいのですが、体は異様に細く、体重は70kgもなかったようです。
現在の飛べる最大の鳥アフリカオオノガンは、体重20kgほどです。飛翔能力は低く、いずれ飛ばなくなるのでは? と思われています。
70kgもの翼竜が自由に飛んでいたかは疑問が残るところですが、少なくとも高い代謝があったことは確実です。鳥類の優れた呼吸器は、恐竜から受け継がれたとされています。翼竜も、気嚢による呼吸器を持っていたのでしょう。

昆虫は、脊椎動物以外で空を飛ぶ唯一の動物です。
昆虫も、飛翔能力を支える高い代謝機能を持っているはずです。
面白いのは、消化の仕組みが脊椎動物とは異なることです。
この違いを利用し、昆虫の消化を阻害する酵素を産生するように穀物の遺伝子を改変した遺伝子組換え作物も開発されています。この場合、人の消化を阻害しないので、普通に食べることができます。

昆虫の呼吸器に戻りましょう。
昆虫は、体側に並ぶ気門と呼ばれる穴から空気を取り入れます。ここまでは、小学校や中学校で学んだと思います。
気門の先ですが、気管が枝分かれして気管小枝が各細胞まで空気を運びます。脊椎動物の血液循環を利用したガス交換ではなく、直接的にガス交換するので、効率は良いと思います。
ただ、昆虫と言っても、様々に適応進化しているので、呼吸方法も様々な形態があるようです。水中にいるヤゴの場合、気門は水中ですから通常の呼吸はできません。そこで、直腸内に水を取り入れて、腸壁でガス交換を行うのだそうです。
昆虫は、性遺伝子を見ても、様々に進化していることがわかります。
哺乳類は基本的に雄ヘテロ型ですが、昆虫には雄ヘテロ型と雌ヘテロ型があります。分類的には、哺乳類と同じように昆虫は全体で一つの『綱』をなしますが、昆虫の進化の多様性は『門』と言いたくなるほどです。(同じ脊椎動物ですが『綱』が異なる鳥類は、雌ヘテロ型の性遺伝子を持ちます)
昆虫が「地球上で最も成功した動物」と呼ばれる理由の一つが、この多様性なのでしょう。



「鳥はなぜ空を飛べるのか?」と題して、長々と取り留めのない話をしてきましたが、これで終わることにします。
鳥が空を飛べる理由を、代謝(特に呼吸器)と考えると、なぜ爬虫類や両生類が翼を持たなかったのか、前肢を翼へと進化させなかったのか、その理由を感じ取れたと思います。

この記事を読んで、鳥が空を飛べる理由を、『翼』だけでなく、翼を機能させられる『代謝(ここでは呼吸器を中心に書きました)』の重要性にも目が向けられるようになって頂けたら幸いです。