大人の間で、小学校教育における『掛け算の順番』が話題になっています。
当ブログでも、半年ほど前に『算数の数え方(小学校の勉強)』と題して書いています。
話題のポイントは、かけ算の順番でした。
かけ算は、計算を逆にしても良い(乗算の交換則)のに、小学校の教育では、かけ算の順番によって誤答としていることが、話題になっています。

具体例を見てみましょう。


【問題1】
一つの袋にアメが7個入っています。
この袋が4袋あると、アメは全部で何個でしょうか。

<式>     <答>
4×7=28   28個


これは、間違いなのだそうです。
その解説ですが、
4袋×7=28袋となり、問題が問うている『個』にならないためだそうです。
この前提には、『前の数字に単位を合わせる』というのがあるそうです。
従って、正答は以下のようになるというのです。

7個×4=28個

なんか、取って付けたような理由ですね。
この理由付けでは、次のような出題の時の誤答には、どう説明するのでしょうか。


【問題2】
一つの袋にアメが7個入っています。
この袋が4袋あると、袋は全部で何袋でしょうか。

<式>        <答>
4袋×7=28袋   28袋


正解は4袋ですが、先程の単位の説明なら、これでも良さそうに見えてしまいます。
確かに意地悪な問題ですが、7個の「個」は正しくは「個/袋」なのに、そこを誤魔化して「単位を合わせる」と指導してしまうと、このような意地悪が成立してしまうのです。本来であれば、4袋×7個/袋=28個となってしまうので、「28」は 袋の数ではないことに気付けるのです。
前回(2019年12月8日)書いたように、キチンと単位を教えるか、それに繋がるように指導する方が良いと思います。
少なくとも、単位を理解する際にこのような教え方では、問題があると思います。また、子供たちが「なぜ間違いなのか?」を理解しにくくなると思います。


と思っていると、次のような話が出てきました。
かけ算の順番にこだわるのは、教育上の都合であって、数学上の問題ではないのだそうです。
『単位当たりの量』と『それが何単位』という概念の区別をつけるためなのだそうです。学年が進み、比率や分数の割り算などを理解する際に、この概念が重要になるということです。
先程の【問題1】で言えば、『単位当たりの量』は「一つの袋にアメが7個」が相当し、『それが何単位』は「4袋」が相当します。
これなら、この後の教育をスムーズにする意図があるので、多少は納得はできます。
納得できないのは、『単位当たり量』を先にする理由です。
そして、数学的には正しい「4袋×7個/袋=28個」を、教育上の都合で誤答とすることが、本当に子供たちにとって良いことなのか、です。


これとは別に、こんなものもありました。

>数学者や物理学者が「掛け算の順番『なんてどうでもいい』」なんて言わない。
>それこそ絶対言わない。
「えっ? そうなの?」
数学的には、かけ算の順番は入れ替えても問題ないし、式を整理するために入れ替えることもあるはずです。かけ算の順番にこだわっていたら、肝心な部分を処理できなくなりそうに思います。

それをわかった上で、かけ算の順番を気にする場合がないか、考えてみました。
理系人間である私が思い付いたのは、計算の順番を単位に合わせる場合くらいでした。

例えば、電力量を計算する場合です。


【問題3】
7WのLED電球を4時間点灯した場合、消費する電力量は何Whか。

7W×4h=28Wh


これを、4h×7W=28Whと書いても間違いではありません。
ですが、単位との繋がりをわかりやすくするために、この順番で書きたいですね。特に、他の人にわかってもらうためには、このような心遣いはあってもいいと思います。


【問題4】
軸とは直角に長さ7mの棒を付ける。
棒の軸とは反対端に、軸の円周方向に4Nの力を加えたら、軸に掛かるトルクは何Nmか。

4N×7m=28Nm


いかがでしょうか。
数学者や物理学者の考えは存じませんが、工学系が掛け算の順番を意識するとすれば、こんな感じでしょうか。
もちろん、答案用紙に逆に書いていても、私が採点するのなら『正答』とします。

ちなみに、「数学者や物理学者が『掛け算の順番なんてどうでもいい』なんて言わない」と言った方は、考え方の順番に従って計算するはずだと、考えたようです。
その意味では、分からないでもないのですが、実際にはシーケンシャルに計算するわけではないと思います。
例えば、地球と月によるラグランジュポイントを計算する場合、地球の引力、月の引力、遠心力のどれが最初になるべきか、決める必要はありません。また、地球と月ではなく、質量が同じ連星系なら、どちらの星の引力を先にするのか決める理由付けもできなくなります。
なので、掛け算の順番を気にする数学者や物理学者はいないだろうと思います。

なお、御本人は、数学者でも物理学者でもないようです。



例によって、ごちゃごちゃと書いてきましたが、私個人の考えとしては、教育上の都合があっても、数学的に正しいなら正答として扱うべきだと思います。数学的には正答なのに、教育上は誤答とした場合は、子供たちは数学的な意味を考える前に、テスト対策としての書き方を覚えようとしてしまうためです。