2020年7月23日、ALS患者の自殺願望を叶えた嘱託殺人の容疑で、京都府警は、医師の大久保愉一容疑者と山本直樹容疑者を逮捕しました。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、一昨年3月に他界したホーキング博士が罹患していたことで知られる難病です。
21歳で発症して55年間も生存したホーキング博士は例外的な長寿でしたが、多くは発症から5年程度で自発呼吸が出来なくなるそうです。それ以降は人工呼吸器が無ければ生きていけませんが、人工呼吸器を付けても10年以上の生存は1割程度という厳しい病気です。
亡くなったALS患者の方は、既に症状が進み、自力では動かなくなっていたようです。
こうなると、本人の意思では自殺することさえできません。
そこで、2人の医師が、昨年11月に患者の自殺に手を貸したようです。

今回の事件の特異性の一つは、患者の主治医ではないことです。患者との関係が薄い人物が、患者の自殺を手伝ったようなのです。
この内容は、今後のマスコミの取材で明らかになっていくでしょうが、殺人請負のような不穏な空気を感じます。


私個人の考えとしては、自殺を認める気にはなれません。
私が癌で入院している時、小児癌の子供たちを見かけました。
車椅子の子も、片足を失い松葉杖の子も、見かけました。子供たち同士で、和気あいあいと話していました。
屋上庭園で、体力を付けるためなのか、一人で歩いている子もいました。しっかりした眼で前を向き、同じ場所を何度も何度も往復していました。
生きていることを楽しむ姿と、生きようと頑張っている姿の両面を見た気がします。
あの子たちを見ると、命の大切さを痛感させられます。

一方で、ALSの残酷さも、知らない訳ではありません。
何年もかけて、ゆっくりと命を失っていく病気です。時間が掛かるということは、家族にも負担を掛けることを意味します。それは、患者の大きな精神的負担になるはずです。
だから、安楽死や尊厳死は、議論されなければなりません。

ただ、関わった二人の医師に、あまり共感は持てません。
事件は、8ヶ月前に起きています。
つまり、二人の医師は、8ヶ月間、事実を隠してきたのです。議論を避け、裏で動いてきたわけです。
このようなやり方は、安楽死や尊厳死の議論にマイナスの影を落とすかもしれません。


まぁ、私は、「ステージ2の癌です」と言われただけで体調を崩すような、軟弱な精神の持ち主です。私がALS患者の苦しみを理解できているのか、怪しいものです。