三菱スペースジェット(旧 MRJ)の事業の凍結が、発表されました。
事業凍結はマーケティング戦略を崩壊させるので、再開されることはないでしょう。


当ブログでも、MRJの設計思想について、書いたことがあります。
設計思想自体がフラフラしていたように感じ、それを記事にしました。
設計思想のフラつきの要因の一つは、エンジンの選定にあります。
ギアード・ターボファンが出現し、設計開始後にエンジンを替えたのではないかと、想像しています。そして、無理矢理、STOL性能向上を口実に搭載することを決めたのではないでしょうか。結果的に、STOL性能をエンジンに頼り、スポーツカーのような推力重量比となってしまいました。
ほぼ同規模のBAe146(ギアード・ファンターボ4基)や、ライバル機のエンブラエルE175ESとの比較でも、10%以上も推力重量比が高いのです。
一方で、MRJの主翼は後退角がBAe146やE175ESより深く、それほどSTOL性能を重視しているようには見えません。

胴体の設計にも、アンバランスを感じます。
胴体を細くし過ぎたため、中央翼が胴体下に張り出しています。
ボギー式主脚を収納するために、ある程度の厚みが必要です。胴体を細くしつつ、客室の天井高を高く設定したため、中央翼が胴体下に張り出す形になったのだろうと思います。
この設計は、貨物室が無い、メンテナンス性が低い(配線や配管の整備はキャビンの床を開けるはず)などの欠点も併せ持ちます。



スペースジェット(MRJ)に代わる事業が再開される時、世界は現状のスペースジェットを必要とはしないと思います。
それを踏まえて、新世代の小型旅客機を想像してみたいと思います。

【胴体】
定員は100名以下(標準型で80名程度)とします。
このクラスでは、座席は4〜6列です。
新スペースジェットは、5列とします。その理由は、貨物室の確保に関係しています。
バラ積みではなく、航空コンテナの搭載を可能とします。航空コンテナが搭載できれば、離島航路の郵便や小荷物の宅配にも有効です。
搭載するのは、LD3-46WFです。このコンテナの幅は2.44mあり、その幅を確保すると、4列では成立しにくくなります。
そこで、ダブルバブル(円筒を重ねたダルマ型)断面か、楕円断面とし、客室と貨物室を確保します。
ダブルバブルでは、上側の円筒は直径3.4m、下側は3.1mとします。
楕円ならば、長軸直径3.8m、短軸直径3.6mが考えられます。
私なら、ダブルバブルを採用します。
ダブルバブルでは、円筒の接続部が左右に開く力に対して弱点となります。前述の案では、接続部がキャビンの床面の高さになるので、床面で左右を結合し、強度を保つことができます。
なお、ダブルバブルと楕円の他には、エピトロコイド曲線(例:バンケルエンジンのロータハウジング)や、ハイポトロコイド曲線も検討してみましたが、良い形状は見つかりませんでした。
どの断面を採用するにせよ、胴体の断面形状は下に膨むことになります。この膨らみによって、スペースジェットの胴体下面に張り出していた主翼のフェアリングは、段差が無くなります。
LD3-46WFが搭載できる世界最小クラスになるはずです。これに、1500m程度の滑走路長の空港に発着できれば、離島航路で優位性を発揮できます。
搭載個数は、前部貨物室と後部貨物室にそれぞれ2個程度が搭載できるはずです。ただ、機体が小さいために、後部貨物室に大型の貨物扉を設置しにくいので、後部貨物室へのコンテナ搭載は、ストレッチタイプのみとなるかもしれません。

大きな貨物室にこだわるのは、別の目的もあります。
政府も、2050年のカーボン・ニュートラルを掲げました。当然、航空機も対象になります。
航空機の対策は、短距離は電動ファン、中・長距離は水素やメタンかバイオ燃料のジェットが考えられます。
スペースジェットは、中距離ですので、水素かメタン、あるいはバイオ燃料でしょう。
ですが、バイオジェット燃料は、低温の特性に問題があるとされています。すると、候補は水素とメタンになりそうですが、どちらも冷却が必要なので、翼内タンクを利用できません。巨大なタンクが必要になるのです。
エアバスでは、貨物室に水素タンクを設置する案を発表しています。それを真似られるように、最初から大きめの貨物室を用意しておくのです。

【機体サイズ】
機体の全長は、30m程度とします。
定員を全席エコノミーで80名とすると、5×16席です。座席ピッチを80cmとすると、キャビンの全長は13mほどです。これに、前後の乗降口、ギャレー、トイレ等を含めると、キャビンの与圧区画の全長は、18m弱といったところでしょう。機首がレドームとコクピットを含めて4mくらいとすると、機首から後部の圧力隔壁まで22mくらいです。これなら、全長は30m以内にまとめられそうです。

この規模の機体の最大離陸重量は、概ね35〜40t程度です。ただ、パイロット協会の規約で、リージョナルジェットの最大離陸重量を39tとしているので、これを狙います。
このクラスは、翼面荷重が400〜450kg/m2です。将来のストレッチによる重量増を加味して、400kg/m2付近を考えます。翼面積は、95〜100m2となります。
これは、スペースジェットと同等ですので、主翼は設計を流用します。ただし、胴体は全面変更するので、中央翼付近は設計変更になります。
翼長は、30m前後になります。

【エンジン】
次は、エンジンです。
スペースジェットと同じプラット・アンド・ホイットニーのPW1215Gとします。これなら、内翼の設計は、ほぼ流用できます。
この場合、まだ推力過剰気味ですが、3.5mほどストレッチした定員100名の機体が主力になると考えると、妥当な水準になります。

【降着装置】
悩ましいのが、脚です。
更なる大型化を考えると、エンジンの径は大きくなります。また、水素ジェットエンジンを採用する場合、ファンの径がどうなるのか、わかりません。
その際にも、地表からの吸い込みを防げるだけの余裕を確保したいところです。
スペースジェットは、パイロンが短く、これ以上の短縮は難しいところでしょう。将来を考えるなら、主脚を見直しておくのが得策です。
一方、前脚は、胴体の見直しの影響で、設計変更は不可避です。仮に、脚部の基本構造を流用する場合、胴体が下に伸びるので、胴体に取り付ける前脚は40〜50cmくらい伸びたのと同じことになります。

元々、スペースジェットは、前脚が短く、地上では前傾姿勢です。
DC8のように、前傾姿勢の旅客機は過去にあります。ですが、スペースジェットの設計初期にエンジンの変更を行ったようで、ファン径が大きくなったので、主脚のみを伸ばす設計変更を行ったのかなと、その痕跡が前傾姿勢に残っているのかなと、私は想像を巡らせています。

閑話休題。
水素ジェットエンジンを採用する際には、機内の燃料タンクから水素を供給することになり、配管の断熱や結露・氷結対策が必要になります。また、翼内タンクを廃し、胴体内のタンクとなると、荷重が胴体に集中するので、主翼の付け根に掛かる負荷が大きくなり、内翼の設計変更は必須です。
なので、その際に必要に応じて主脚を見直せば良いでしょう。
ですので、主脚はスペースジェットを流用することにします。前脚も、基本構造を流用します。これで、地上での姿勢も水平になるはずです。

【ストレッチ】
将来の拡張ですが、定員100名の機体も考えられます。
定員は増やしますが、変更点は胴体のストレッチのみとし、エンジンも主翼も変更しません。エンジンと主脚には余裕があり、バランスはストレッチ型の方が良くなるはずです。
中央翼の前と後を3フレームピッチ延長することで、ストレッチ型を成立させます。
標準型とストレッチ型の棲み分けは、標準型が離島航路、ストレッチ型は短・中距離の地方都市間航路とします。
標準型は、エンジンと翼面荷重に余裕があるので、離島航路にも持ち込めます。また、航空コンテナを搭載できる強みで、ある程度の販路を獲得できるはずです。
ストレッチ型は、STOL性能は劣るので離島への就航は難しくなると思います。ですが、定員が増え、後部貨物室にもコンテナを搭載できるようになるので、乗客が少なくても貨物で多少は補完できる強みがあります。
このように、両タイプの性格の違いで棲み分けられると思っています。



私の特異(得意でもある)パターンですが、『捕らぬ狸の皮算用』で、スペースジェットの再開時の希望を書きました。
C1やC2をベースに開発する案もあります。ですが、FAAの承認を得ようとすると作り直しに近い変更になって、C1やC2を旅客機に改良するメリットはなくなり、デメリットばかりになり兼ねません。

私の妄想を書いた訳ですが、多少は説得力があると信じています。