タコの足は8本が常識ですよね。
最近、宮城県で9本足のタコが見つかり、話題になりました。
ですが、9本足のタコは、珍しいことではありません。国内には、最高で96本足のタコも見つかっているのです。
96本足のタコは、志摩マリンランドに標本が展示されているそうです。鳥羽水族館にも、85本足と56本足のタコの標本が展示されているそうです。

タコは、足の再生能力を持っています。
足を喰いちぎられても、元通りに再生されるのです。
足の再生は、喰いちぎられたら始まります。喰いちぎられなければ、再生する必要はありません。
では、喰いちぎられたか、否かを、タコはどうやって知るのでしょうか。
私も、その仕組みは知りませんが、例えば神経が切れたら喰いちぎられたと判断するのかもしれません。いずれにせよ、完全に足が無くならず部分的に喰われただけでも、足の再生が始まるのだろうと、推測できます。
喰いちぎられる場所も、根元ではなく、途中のはずです。
となると、根元は8本の足が、途中で枝分かれしているはずです。
冒頭で紹介した9本足のタコですが、根元は8本で、その内の1本が途中で二股に分かれていました。
56本足のタコも、85本足のタコも、96本足のタコも、根元は8本で、途中から複雑に枝分かれしています。

「9本足のタコは放射線の影響ではないのか?」と危惧される方がいるかもしれませんが、その可能性はないと思われます。
放射線は、遺伝子を破壊する場合があります。ですが、破壊で新たな形態を作ることは滅多にありません。
例えば、1枚のお皿を落として割ってしまったとします。その破片が、2枚のお皿の形になる可能性は、ほとんどありません。それと同じように、破壊された遺伝子が、運良く新しい形態を作るようになる可能性は極めて低いのです。
「放射線の影響は絶対にないと言い切れるのか?」と問われたなら、「ゼロではない」と言うしかありませんが、実質的には悪魔の証明に近いレベルです。
放射線の影響である確率は、貴方が明日までに死ぬ確率よりも遥かに低いと思われます。
貴方が健康体だとしても、貴方の家に閉じ籠っていたとしても、その家にトラックが突っ込むかもしれません。飛行機が落ちるかもしれません。強盗が押し入るかもしれません。
そういった確率よりも、放射線の影響でタコの足が9本になる可能性は低いと考えられるのです。
福島原発の放射線の影響は、それはそれで注視しなければなりませんが、9本足のタコで根拠もなく不安を煽ることは慎む方が良いと思います。


さて、タコの足は8本、イカは10本は常識ですね。
実は、イカの足は8本なのです。10本としているのは、2本の触腕を含めて数えているためです。タコは、イカから進化したとされていますが、触腕を退化させたのです。
ですが、この解釈も正しくないようです。
タコもイカも、足としている部分は、正確には腕に分類されるようです。
正式な分類では、タコもイカも、軟体動物門・頭足綱・蛸形亜綱ですが、タコは八腕形上目、イカは十腕形上目です。
このように「足」ではなく、「腕」の本数で、タコとイカを分類しています。
ちなみに、クモや昆虫は、節足動物なので、「足」となります。やはり、タコとイカは、「足」ではなく、「腕」のようです。

でも、動物は8本足(腕?)の生き物が多いですね。
タコ、イカ、カニ、クモなど、陸棲、海棲を問わず、8本足の動物がいますが、分類上は異なります。
カニとクモは節足動物門で、タコやイカとは分類の「門」から違います。
これは、大きな違いです。
人類は、脊索動物門に属します。脊索動物門にはホヤも含まれますから、分類学上は、人類とホヤのちがいより、タコとクモの違いの方が大きいことになります。
8本足になる進化圧が存在しそうな気がしてきます。
ちなみに、以前に当ブログで「タラバガニはヤドカリの仲間」と紹介しました。その中で、「タラバガニは6本足」と見分け方を書いています。
タラバガニ
 
これは、ヤドカリだから足は6本(ハサミを含めて8本)との趣旨で書いてしまっていますが、正しくはタラバガニの足は8本(ハサミを含めて10本)です。最後の2本は小さくて折り畳まれていて、見えないだけです。
というわけで、カニもヤドカリも10本足です。
となると、昆虫も気になります。
昆虫も、6肢と4翅ですので、合わせて10本足と見ることはできないのでしょうか。
どうやら、そうではなさそうです。
昆虫の身体は、頭・胸・腹からできていることは、中学校までに学んでいると思います。足と翅は全て胸にあります。胸は、前胸・中胸・後胸に分かれます。肢は、それぞれに一対ずつありますが、翅は、前翅が中胸に、後翅が後胸にあります。どうやら、10本の足の内の4本が翅に変わったのではなさそうです。


いつもいつも、わかったような、わからないような話をしていますが、今回もタコの足の本数から迷走してしまいました。
まとめると、こんなところでしょうか。

・タコには足が無く、腕が8本ある。
・タコの腕には再生能力があり、枝分かれして96本の腕を持つタコがいる。
・最近、宮城沖で見つかった9本腕のタコは、放射線の影響は考えにくい。
・イカは10本の腕があるが、触手の2本が退化してタコになった。
・カニは8本足ではなく、ハサミを含めた10本足である。
・タラバガニはヤドカリの仲間で、ハサミ含め8本足に見えるが、実は10本足である。

まあ、こんなところでしょうか。