菅義偉氏は、「2050年までに国内の温室効果ガス排出の実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す」と発表しました。
当ブログのサブテーマが、『温室効果ガスの実質ゼロ』です。ですので、当ブログにとって歓迎する発表です。
ただ、中身が薄い発表でした。
続いて、14項目に分けて検討することが発表されました。

 1.洋上風力産業
 2.燃料アンモニア産業
 3.水素産業
 4.原子力産業
 5.自動車・蓄電池産業
 6.半導体・情報通信産業
 7.船舶産業
 8.物流・人流・土木インフラ産業
 9.食料・農林水産業
 10.航空機産業
 11.カーボンリサイクル産業
 12.住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業
 13.資源循環関連産業
 14.ライフスタイル関連産業

私が、『2100年のあるべき日本の姿』で書いていることとダブる項目もあります。
これを見ると、日本も動き出した感があります。
ただ、残念なことに、トップダウンではなく、ボトムアップ型であることを思わせます。
おそらく、総理から各大臣に指示が下り、そのまま省に下りたのでしょう。省内のどこまで落ちっていったか知りませんが、ブレークダウンされずに落ちていったのでしょう。そして、上昇志向の強い人物のところで受け止められ、まとめられたのでしょう。
そのため、分類が不完全に感じる部分があります。
『5』に含まれる『蓄電池』は、少なくとも『1』、『7』、『12』に関連します。おそらく、電気自動車をイメージして一つにまとめたのでしょう。つまり、経産省の自動車部門がまとめたのかなと、想像されます。
これらは、ビジョンを持って打ち出されたのではなく、自分の担当部門で、単に「CO2を出しているものを、CO2を出さないように変える方法を考えよう」と言っているだけのように見えるのです。


温暖化対策のように、大規模かつ多分野の課題を解決するには、社会構造を見直す必要があります。
切り口は、脱化石燃料を実現するために、エネルギーと原材料の根本的な見直し。
この見直しに伴う社会システムの再構築。つまり、地球という閉鎖環境への本格的な対応。
例えば、通勤や通学の概念自体を考え直す。人は、何のために移動するのか、根本から見直すのです。
これは、「人が幸福に生きるとは、どういうことなのか?」を問うようなレベルまで達します。
脱炭素社会を実現するためには、様々な研究・技術開発が必要であると同時に、人の幸福を考える哲学的な検討も、必要です。それくらい大きく社会システムを変えていくべきであり、変えなければ実現は難しいが、変えるチャンスでもあるのです。
そのような意気込みが、あの14項目からは感じられないのです。


さて、少し軽く考えることにしましょう。
政府目標は、カーボンニュートラルとなっているので、化石燃料を使わないことも意味しません。要は、排出と同量の炭素を回収すれば、カーボンニュートラルになります。
なので、裏技も出てくるでしょうが、それは2050年頃の政権が繰り出すことでしょう。現政権のことではありませんが、裏技はざっと確認しておきましょう。
裏技のいくつかは、当ブログのメインテーマの『食糧自給率の向上』に直結するので、無視できません。と言うのも、カーボンニュートラルの実現手段のいくつかは、食糧または農地を利用して、エネルギ生産を行うためです。

既に、アメリカやブラジルでは、エタノール燃料の車が使われているそうです。
実用車ではありませんが、インディ500レースのレーシングカーは、エタノールが使われています。(2007年から)
エタノールは、お酒のアルコール(エチルアルコール)と同じもので、植物(主として穀物や芋類)の発酵で生産されたものをバイオ・エタノールとよびます。バイオ・エタノールは、植物を原料としているので、バイオ・エタノールを燃焼させて出るCO2は、植物によって大気中のCO2を吸収していたものと同量になります。
このように、吸収分と排出分が釣り合うことを、『カーボンニュートラル』と呼びます。

バイオ・エタノールを含むバイオ燃料は、農地から収穫される農産物が原料になります。そのため、食糧とのトレードオフ関係になります。バイオ燃料によるカーボンニュートラルを進めると、食糧事情が悪化することになります。
日本のように、食糧の多くを海外に求める場合、エタノールや原料も海外に依存することになります。
現状でも、原油の大半を海外に依存していますが、原油と違いエタノール原料は食糧にもなるため、食糧不足になる可能性があります。そうなると、食糧自体の価格が上昇するだけでなく、食糧生産国の地位が上がるため、相対的に『円』の価値が下がるリスクも考えられます。
この点で、原油の輸入とエタノール原料の輸入は、経済的な背景が異なります。

当ブログで、『食糧自給率の向上』という個人ブログらしからぬテーマを掲げているのは、このような危機感があるからです。

辺境のブログを運営する偏狭な伊牟田ですが、『食糧自給率の向上』あるいは『地球温暖化防止』についての御意見がありましたら、コメントをお願いします。


おまけです。
今から101年前の今日(1月16日)、アメリカでは禁酒法が施行されました。
日本も、禁酒法を制定して、余ったお酒からエタノールを取り出し、自動車の燃料に使うのは、いかがでしょうか。
カーボンニュートラルの実現が、近付くかもしれませんよ。