2週間ほど前になりますか。

アフリカで体高が大幅に低い「ミニキリン」が、ナミビアとウガンダで発見されました。首の長さは普通ですが、脚が異様に短いのです。
キリン保護財団の関係者は「より詳しく知るために遺伝子検査が必要だが、これが『ミニキリン』であることは間違いない」と話しているそうです。

TVでは、「新種かも?」と紹介したものもありました。
ですが、この『ミニキリン』は、新種ではなく、人でも見られる四肢短縮症のようです。
四肢短縮症は、人間では2万人に1人くらいの割合で発症するそうです。症状としては、四肢や指が短くなるのが特徴ですが、詳しくはないので省略します。
四肢短縮症は、遺伝子の異常によるもので、顕生遺伝(優生遺伝)するそうです。
四肢短縮症が生存や交尾に有利に働くなら、徐々に数を増やす可能性はあります。ただ、私が想像する範囲では、生存で有利になりそうにありません。おそらく、一代限りで終わるのではないかと、想像します。



このニュースに関して、メディアから取材を受け、御本人の意図とは違う扱いをされたことで憤慨されている研究者がいます。

その方は、メディアによってニュースの内容が歪められていく過程も、大元の論文から辿りながら紹介しています。
(リンク→ https://note.com/anatomygiraffe/n/nd95faa0b283e
実は、冒頭の「キリン保護財団の関係者」の発言も、『ミニキリン』ではなく、『低身長症』と表現していたそうです。(誤解を招くため、個人名を避けて『関係者』としました)
元の論文から英語版のニュースになる際に、ミスリーディングな記事となり、和訳される際に大袈裟な表現になる一方で、多くの情報が削除されていたことを、研究者は見事に指摘しています。(※『四肢短縮症』は『小人(低身長)症』の一つです)

もう一つの問題は、インタビューの編集です。
ワイドショーのインタビューに対して、研究者は「当該のキリンは子供でまだ小さいので、大人と体格を比較すべきではない」、「小人症のような病気」を強調するようにお願いしたが、カットされたそうです。更に、追加でインタビューされた「初めて聞いた時の感想」だけが放送されたそうです。しかも、「新種かも」と煽ったようです。
おそらく、ワイドショーの担当者は、研究者の話を上司に伝えたのでしょう。ですが、『ミニキリン』のインパクトが無くなると判断した上司は、インタビューの切り口を変えて再インタビューさせ、それを番組に使ったのでしょう。
つまり、情報の正確さは無視し、インパクトを最優先しているのです。
この研究者は、流石にウンザリされたようで、「今後は本件の取材は全てお断りします」とおっしゃっています。

このような事例は、過去にも耳にしたことがあります。また、メディアの不理解による誤報もありました。
先の研究者も、以下のように結んでいます。

「今回はちっちゃいキリンがいるかいないかという話ですが、政治や国際情勢、医療関係の記事でも、ネットニュースやワイドショーでは同様の情報操作が起きているはずです。まずはそのことを頭の片隅に置いておくことが重要と思います」

当ブログを読んでおられる方は、「そんなの当たり前」と思われているかもしれません。
私も、メディアが自己都合で情報操作することは、当たり前のように行われる由々しき問題と思っています。



さて、折角ですから、少し科学的な視点でも『ミニキリン』を見ておきましょう。

当ブログでは、動物の歩き方を扱ったことがあります。
その中で、四つ脚の哺乳類の歩き方は『クロール』と紹介しましたが、別の説明もあります。それは、『側対歩』と『斜対歩』です。

多くの哺乳類は、『斜対歩』とされています。
その歩き方は、左前脚と右後脚、右前脚と左後脚をそれぞれセットにして動かす歩き方を指します。斜めの位置にある脚をセットにするので、『斜対歩』と呼びます。
これに対して、『側対歩』は、左前脚と左後脚、右前脚と右後脚をそれぞれセットにして動かす歩き方です。両側を交互に動かすので、『側対歩』と呼びます。
実際には、完全なる『斜対歩』や『側対歩』の動物はいません。いずれも、基本的な足の運びは『クロール』です。
では、実際の『斜対歩』や『側対歩』は、どんな歩き方なのでしょうか。
『斜対歩』に分類されている動物の歩き方は、実際には、ほぼ『クロール』です。
では、『側対歩』はどんな歩き方でしょうか。
まずは、『クロール』を復習しましょう。
下図のように、
左前脚→右後脚→右前脚→左後脚→左前脚の順で動かします。
クロール

(キリンは偶蹄類だから、図の足跡は間違っているとの指摘は無視しますので・・)

『側対歩』も、基本的には『クロール』ですが、脚を動かすタイミングが少し違います。
左前脚→右後脚→右前脚→左後脚→左前脚の順で動かすのは『クロール』と同じですが、後脚が着地する前に、前脚を前へ運び始めるのです。
脚が長い場合、前脚が接地している場所より、後脚の着地点が前になるため、前脚が邪魔になるのです。だから、前脚が邪魔にならないように、早めに前脚を前へ動かすのです。
この歩き方では、前脚と後脚が同時に浮いているタイミングがあるので、『側対歩』と呼びます。

では、どんな動物が『側対歩』で歩くのでしょうか。
脚の長いキリン、ラクダ、ゾウが、『側対歩』で歩くとされています。
馬術で『側対歩』があるそうですが、馬の自然な歩き方は『斜対歩』です。

やっと、キリンに辿り着きました!
キリンは、『側対歩』で歩きます。そして、その理由は、脚が長いからでしたね。
ならば、脚が短い『ミニキリン』は『側対歩』なのでしょうか?
脚の長さと胴の長さの関係は、馬に似ています。馬は『斜対歩』ですから、『ミニキリン』も『斜対歩』で歩けるはずです。
動画を見てみると、どうやら『側対歩』で歩くようです。
キリンは、誕生から1時間ほどで立ち上がり、歩き始めます。これほど短時間ですから、誕生後の学習で歩き方を身に付ける時間はありません。生まれながらにして、歩き方を知っているのです。
『ミニキリン』が『側対歩』で歩いていることからも、歩き方は学習ではなく、元々身に付いていることがわかりますね。


メディアの科学的センスの無さと、営利最優先の姿勢が、『ミニキリン』に対する扱いから見えてきますね。
こんなレベルなのに、日本人は馬鹿ばかりだから、TV人が教育してやる」と宣った日本民間放送連盟会長もいました。
こんなレベルのTV人から教育を受けたなら、ちょっとデブッただけで「これは、新種の猿に違いない!」と言われて動物園のオリに入れられてしまいそうです。服を着ていても、「ペットで飼われていたのだろう」と言うに違いありません。会話しても、「解剖学的にあり得ない。これは解剖するしかない!」と、解剖されてしまうかもしれません。
(どこかで聞いたことがセリフです) 

少しは、当ブログで勉強してほしいものです。