2050年のカーボンニュートラル実現のため、自動車の電動化が叫ばれています。
東京都では、2030年にガソリンのみで走る車を廃止、2035年には二輪車にも拡大するとしています。

これは、メディア関係出身者の考えそうなことです。
一見、良さそうに見えるかもしれませんが、考えが浅いですね。
仮に、全て電気自動車に変更しても、CO2排出量はほとんど変化しないはずです。なぜなら、電力の8割が火力発電だからです。
近年の自動車は、燃費が良くなっています。熱効率では、コンバインドサイクル火力発電には及びませんが、天然ガスしか使えないコンバインドサイクル発電に全てを切り替えることもできませんし、送電や充放電の損失も考えれば、電気自動車とガソリン車でトータルの効率は大差ないと思います。

単純な熱効率で始めましたが、自動車の効率は、本来なら輸送力に対する消費エネルギーで判定されるべきです。
人の輸送なら、1人を1km運ぶ際に必要なエネルギで比較するべきです。
基本的には、燃費での比較となります。
大型のハイブリッド車より軽自動車の方が燃費が良いことを考えると、ハイブリッド車に切り替えることでCO2排出量が増えることも考えられます。
軽自動車の燃費が良いのは、軽量だからです。
1人を運ぶために、どれほど余分な重量を減らすかで、燃費は変わります。だから、多人数乗車は効率が上がるのですが、自家用での平均乗車人数は2人程度なので、自動車自体の軽量化が燃費に直結します。

東京都の2030年までの電動化は、拙速なく印象を受けます。
政府の『2050年カーボンニュートラル』の向こうを張って、「こっちの方が凄いだろう」と喚いている印象です。だから、目標に至る過程は見えてきませんし、何が目的なのかも、曖昧になっています。
もちろん、東京都の宣言そのものが、カーボンニュートラルまでの道標の一つになり得ますが、目標だけでは精神論(政治家は大好きですよね、精神論)で終わってしまいます。
何らかの具体的なアクションが必要です。それがないなら、ただ注目を集めたい目立ちたがりです。


ところで、自動車の電動化は、可能なのでしょうか。
東京都は、ハイブリッド車もOKとしています。実際、電気自動車とハイブリッド車(マイルドハイブリッドは除く)で、CO2排出量は大差ないはずですから、この考えは間違ってはいません。
ですが、世界的なトレンドとしては、ハイブリッド車は『無策』として扱われます。
ならば、電気自動車にできるのか、と問われれば、日本の現状を踏まえると、不可能に近いと思われます。

今年1月の寒波では、全国的に電力不足に陥りました。
国内では、停止中の原発が多いことに加え、再生可能エネルギー発電が増えたことが、電力不足の原因となっています。
再生可能エネルギーの代表は、太陽光発電ですが、積雪や悪天候で発電力が低下することは知られています。風力発電も、無風では発電できないのはもちろん、台風のような強風でも発電できません。
再生可能エネルギーは、需要に合わせた発電量を得られないため、このような事態に陥り易い弱点があります。
この対策は、今回は書きませんが、自動車のEV化を進める際には、これを踏まえた議論が必要になることは、忘れてはなりません。

世間では、EV化に必要な電力は再生可能エネルギーで賄えるとする主張が多いようですが、簡単ではありません。
例えば、自動車が必要となる時間帯は、主に日中です。太陽光発電が利用できるのも、日中です。と言うことは、走行中の自動車に電力を送らなければなりません。
もし、自動車が夜間に使用されるのなら、日中に太陽光発電したものを直接的に自動車に充電できますが、自動車を使用する時間帯こそ、太陽光発電のピークになります。
案はありますが、効率や構造、インフラなどを考えると、中々難しいところです。
再生可能エネルギーで自動車を動かすことには賛成ですが、理念だけでは実現しません。
そこは、重要です。



ところで、東京都が打ち出した自動車の電動化は、ハイブリッド車を許容するようです。
ハイブリッド車には、ストロングタイプとマイルドタイプがありますが、軽自動車ではマイルドタイプがスズキから出ているくらいで、ストロングタイプは無かったと記憶しています。
東京都で軽自動車を販売するためには、各社とも、少なくともハイブリッド車を用意しなければなりません。
国内の各メーカーは、小型車や中型車に使えるハイブリッド技術や生産設備を有していますが、軽自動車用のストロングハイブリッド車は生産していません。
現状のハイブリッドシステムを軽自動車用に転用するためには、電池を搭載するために車体から再設計し直さなければなりません。
これをクリアしても、ハイブリッドシステム自体を再設計しなければなりません。
これらを考えると、最も対応が容易なのは、日産のe-Powerかもしれません。
e-Powerは、エンジンは発電にしか使わないので、現行のe-Powerのエンジンのみを軽自動車規格のエンジンに交換すれば、何とかなりそうです。モータや駆動系は、日産の系列である三菱i-MiEV用を流用できるかも。
まあ、仕様が合わないなど、そんなに簡単にはいかないのでしょう。
それでも、各社が、どんな東京都仕様の軽自動車を発売するのか、ちょっと楽しみです。