自動車の電動化が打ち出され、日本の自動車メーカーも重い腰を上げようとしています。
自動車の電動化だけがカーボンニュートラルではないので、二面から見てみましょう。


まず、内燃機関を搭載するカーボンニュートラル自動車を考えてみましょう。
現在の日本では、乗用車に搭載される内燃機関は、圧倒的にガソリン(オットーサイクル)エンジンが多く、ディーゼルエンジンは一部です。逆に、バスやトラック等の大型車は、ほぼディーゼルエンジンです。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの燃料は、それぞれガソリンと軽油です。
ガソリンも軽油も、石油から生成されます。日本に輸入されるサウジアラビア産原油からは、ガソリン19%、灯油・軽油46%、重油34%に分離されます。軽油は、国内生産量を上回るため、輸出しています。

人工的に生成できる燃料としては、エタノールと、ユーグレナによる燃料があります。
エタノール燃料は、ガソリンの代替燃料です。発熱量が少なく、材質によっては腐食等の問題がありますが、現時点でも広く使われていて、エンジンや自動車側に大きな問題はないでしょう。
残る問題は、食糧生産とトレードオフ関係にあることです。
食糧自給率が100%を大きく下回る日本では、エタノール燃料は不向きでしょう。

ユーグレナ燃料は、灯油の代替が期待されます。
ディーゼルエンジンでは、灯油でも重油でも動作します。
ただし、ユーグレナ燃料は、現時点では、灯油も軽油も完全には代替できません。また、ディーゼルエンジンは、燃料ポンプの潤滑を燃料の粘性を利用するため、燃料の性質に合わせて設計を変える必要があります。同時に、燃料の品質が一定していなければなりません。
ユーグレナは、現時点の食品利用は多くありませんが、今後は食糧とのトレードオフ関係になる可能性があります。


電気自動車は、大きく二つの問題があります。
一つは、蓄電池です。
充電量と充電時間が、実用レベルに達していません。充電量は、搭載する電池の量を増やすことで、ある程度は改善できます。
ですが、重量や搭載方法を考えると、小型軽量化は必須です。そのための新技術の開発は、国策として進めていくべきでしょう。

もう一つが、元々の発電方法です。
電気自動車に供給する電力は、3/4以上が化石燃料で作られています。電気自動車で需要が増加すれば、電力消費も増加します。
今冬には、大雪によって電力需給が逼迫する事態もありました。
電力不足の原因は、再生可能エネルギー発電(以下、再エネと略す)が、積雪で大幅に低下したためのようです。再エネ発電は、天候や日照時間の影響が大きいためです。

そこで、供給過剰時のみ電力を販売する電気自動車専用の充電ステーションがあったら、面白いと思います。
例えば、太陽光発電が過剰になる夏場の日中にだけ、電気自動車に電力を供給するのです。なので、夜間はいつまで経っても充電されません。
その代わり、電気代は原価(固定買取価格)に近い安価なものとします。
ただし、原価割れにはしません。原価割れを起こしてまで、再エネの電力を販売する理由はありません。
原価割れを再エネ発電事業者が負担するなら、話は別です。ですが、発電量が増える時に電気自動車に充電することになるので、再エネ発電事業者は利益どころか、電力を廃棄物扱いすることになります。これでは、再エネ発電を衰退させます。
再エネによる電力供給の変動分を吸収する手段の一つが、蓄電池です。ですが、必要な蓄電池は桁外れで、到底、用意できる量ではありません。
電気自動車の蓄電池を、再エネ発電の蓄電に利用することで、余剰分の一部を吸収させるのです。これは、再エネ発電の拡大ではなく、電気自動車の拡大を目的としているので、その視点でのアイデアです。

ところで、太陽光発電の買取価格は、12〜19円/kWhです。
仮に、20円/kWhで販売する場合、電気自動車の電費が8km/kWhとすると、2.5円/kmくらいになります。ガソリン単価を130円/l、燃費を40km/lとすると、3.25円/kmです。
電気自動車が有利になるので、電気自動車の普及にプラスになるかもしれません。
必要時に充電されているとは限らないので、利便性は低いのですが、電気自動車の充電量が増えれば、余剰電力が多い土日に充電して平日に使うような利用形態もあります。

電気自動車は、もう一つの道が考えられます。
FCVです。
燃料の水素は、余剰電力で生産します。つまり、余剰電力を水素の形で保存し、必要時に電力として利用する考え方です。
ただし、水素を生産するためには、電力の他に大量の水が必要になります。細かく見れば、電極の素材も消耗するので、これもかなりの量が必要になります。
ただ、静岡県知事の反応を見ると、水の確保も、相当に難しいでしょう。
同時に、廃棄物として出る大量の酸素も、問題になるはずです。
ただ、蓄電池だけで走る電気自動車よりも、日本では可能性があるように思います。


自動車の未来を考えてきました。
ざっと見ただけですが、日本はどんな方向性を考えるのか、今までの常識も見直す必要もあるでしょう。

例えば、バスとトラックで、同じタイプの動力を使う必要はありません。
中・大型トラックは、荷重が大きいのでRWDであるべきですが、荷重が小さいバスは、FWDが可能です。後輪は、逆位相操舵で小回り性を確保してもいいはずです。
FCVを含む電気自動車なら、モータは小型なので、FWDもRWDもAWDも容易です。コストを考えると、FWDかRWDになるでしょうが、自由度の高さは魅力です。

バイオ燃料を使う内燃機関の場合、ほぼ従来から変わりません。車の基本構造を変える必要はありません。
ただ、バイオ燃料は、低温で固化しやすいと聞きます。バイオ燃料を改質する酵素のようなものを開発しないと、実用的に使えないかもしれません。
トラックは、厳しい環境で使われることがあるので、それに耐えられることが条件に追加されます。


2050年のカーボンニュートラルに向けて、どんな方向性が出てくるのか、注目していきます。