日本人女性の幸福度は、出産前がピークとなるそうです。
出産し、子育てが始まると、幸福度は下がっていくのだそうです。

当ブログでは、現時点の人口減少は歓迎していますが、将来的には人口を一定に保つために、少子化には関心を持っています。
 (変わってるなぁ。普通は、人口減少と少子化はセットで議論するんだけどな)
女性の幸福度が出産によって低下することは、少子化の原因を考える上で重要です。

女性の幸福度を研究した拓殖大学の佐藤一磨准教授は、日本では女性の幸福度が上昇傾向にあるとしています。
一方、ミシガン大学のスティーブンソン教授とウォルファース教授は、アメリカでは1970年代以降、男性の幸福度は変化ないが、女性の幸福度は下がっているとしています。
ヨーロッパでも、似た傾向にあると言います。
2氏は、『計測できていない重要な社会経済的な要因の変化』や、『女性の幸福度に及ぼす構成要素の変化』が考えらると言っています。

日本では、1970年代からの幸福度の研究はありませんが、2000年から2010年については、国際医療福祉大学の光山奈保子准教授と緒方貞子平和開発研究所の清水谷諭上席研究員の研究があります。
それによると、男性の幸福度は、2000年代前半はやや低下し、後半は回復したそうです。女性の幸福度は、前半は横ばいながら、後半は上昇傾向にあったと言います。しかも、相対的には、男性より女性の幸福度が高いのだそうです。

拓殖大学の佐藤一磨准教授は、女性の幸福度の上昇傾向は、少子化が進んだからではなきかと見ています。
出産しない女性が増えたから、平均すると幸福度が上昇したのではないかとの考えです。
調べてみると、2005年頃を境に出生率は上昇しています。つまり、女性1人当たりの出産数は増加傾向にあるのです。
少子化では、女性の幸福度を変化を説明できないと、私は考えています。


以前にも書いたように、「幸福度に男女差があってはならない」と考えています。
現在の日本では、女性より男性の幸福度が低いわけですから、本来であれば、そこに対策していくべきです。
欧米各国では、男性より女性の幸福度が低いわけですから、対策は日本とは真逆になるはずです。

ポイントとなるのは、女性の社会参画です。
アメリカでは、1970年代から女性の幸福度が下降傾向でしたね。
1970年代は、ちょうどウーマン・リブ運動の時代です。この頃から、女性の社会進出が始まったと言って良いでしょう。
それ以前は、男性社会でした。社会的に高い評価を受けるのは、男性だけでした。
「女性も同じように活躍できる」
確かに、その通りですが、誰でも活躍できるわけではありません。
様々な制約や軋轢の中で収入を得ることは、大変なことです。だから、男性も活躍できない人がほとんどなのです。やりがいのある職場なんか、滅多に巡り会えません。
むしろ、ストレスに晒されて、そこから逃げようとさえするのです。
1970年代から、アメリカで女性の幸福度が下降傾向を示したのは、一つには、社会に出る女性が増えるつれて、ストレスに晒される女性も増えたことが考えられます。

欧米は、男性と女性を同じように扱うことを選択し、それを実行しています。
日本は、それを真似する必要はなく、女性の幸福度を見る限り、真似をしない方が正しいようにも思えます。
日本で、出産を機に女性の幸福度が下降傾向を示すのは、出産自体は関係が薄く、社会での女性の活躍の場が関係しているのではないかと、思うのです。
日本は、欧米各国に比べると、女性の社会進出はかなり低い水準です。
それを改善するために、女性管理職の割合等で数値目標が示されています。これは、能力より性別が優先される登用法です。結果的に、女性に有利に作用している可能性があります。
男性との比較で、女性の発言力が高まるので、相対的に女性の幸福度が高くなっているのかもしれません。
ですが、出産を機に、誤魔化しが効かない子育てに直面し、責任感や義務感によるストレスから、幸福度が下降傾向を示すのではないでしょうか。
男性が、出産の影響を受けないのは、元々社会でストレスに晒されていることと、子育てでは、義務感によるストレスと家族を守ることのやりがいが相殺するのかもしれません。

少子化の対策として考える時、結婚しても幸福度が下がらないので、ポイントは出産となります。
結婚はするが、子供は絶対に作らないと考える夫婦は稀でしょう。
ならば、少子化対策は、二人目以降の出産を希望する夫婦を増やすことになりそうです。
子育ての限界を感じるのは、一つは金銭面です。二つ目は、時間的・体力的な制約です。
前者は、特に教育費の高騰があります。親の収入と子供の学歴に比例関係があるのは、憲法の理念から外れます。国立大学の学費高騰は、問題です。
後者は、昔から言われる核家族化が影響していると思います。地方展開による住環境の改善とテレワークによる勤務形態の自由度の向上で、大家族は無理でも、近隣に住めると、随分と楽になります。


女性の幸福度に絡めて、少子化対策を考えてきました。
女性の幸福度は、少子化に関係していると考えられるので、更なる研究と分析による新しい知見がありましたら、また取り上げようと思います。
もう一つは、妻の出産が男性の幸福度に影響することが、私は望ましいと考えています。もちろん、幸福度にプラスになる関係です。
そのあたりも、もし研究されていたら、面白いと思っています。