東京都は、2030年までに域内で販売される自動車を電動化する目標を、発表しています。同時に、50%を電気自動車にする目標を設定しました。
電気自動車(EV)には、燃料電池車(FCV)を含まれるようです。

純ガソリン車、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車のCO2 排出量を、大雑把に計算してみましょう。

計算に使うのは、以下の車とします。
車体の大きさ、重量、駆動方式等、燃費に影響しそうな要目をなるべく近付けました。

・純ガソリン   マツダ3   1360kg 15.6km/l
・ディーゼル   マツダ3   1410kg 19.8km/l
・ハイブリッド  プリウス   1370kg 30.8km/l
・電気自動車   リーフ    1450kg 114Wh/km

※標準的なグレードで比較しています。個々の数値は当該グレードの値です。

※今回は、水素の大半は、副産物が利用されているためか、水素の製造時の二酸化炭素排出量の
 データを見つけられませんでした。そのため、燃料電池車は比較していません。


概算ですが、走行1km当たりの二酸化炭素排出量は、以下のようになります。

・ガソリン車   150g/km
・ディーゼル車  130g/km
・ハイブリッド車  75g/km
・電気自動車    55g/km


電気自動車でも、大量のCO2 を出していることがわかります。
発電の約8割が、化石燃料を使用する火力発電のためです。

これを解決しなければ、下手をすると温室効果ガスの排出量を増やし兼ねません。
また、製造から廃棄までのライフサイクルでも、温室効果ガスを大量に排出しています。
例えば、主要材料である鉄は、大量のコークス(石炭の一種)を燃やします。当然、大量の二酸化炭素を排出します。
電気自動車では、電池に使うリチウムも、精製や輸送で二酸化炭素を排出します。
更には、自動車には、様々なプラスチック製品が使われていますが、これらは石油から作られており、焼却処分をすれば、大量に二酸化炭素を排出します。

このように、ライフサイクルの中で、大量の二酸化炭素を排出するので、カーボン・ニュートラルを実現するためには、ライフサイクル全体にメスを入れる必要があります。



そこで、一般的な温室効果ガス排出税とは別に、自動車税に二酸化炭素排出分を追加課税をします。
こちらは、原料輸入、製造から廃棄、最終処分に至るまで、全工程の温室効果ガス排出量に見合う課税をします。
ただし、電気自動車や燃料電池車の普及を目指すため、当面は減免し、2050年までに段階的に100%課税まで減免措置を解除していきます。
順調にカーボン・ニュートラルが進めば、自動車税は増えず、むしろ下がります。

このような手段を取るのは、自動車業界の資本や技術が、電力業界や石油材料業界にも流れるようにするためです。
もう一つの目的は、自動車製造に拘らず、人と物の移動の全般に関わってほしいのです。
人や物を運ぶ全ての業界で、自動車業界が培ってきた高い技術を活かしたいところです。


カーボン・ニュートラルは、温暖化対策において、当面の目標として有益です。
ただ、カーボン・ニュートラルは、中間目標であって、最終目標ではありません。
カーボン・ニュートラルは、アルコール燃料を含むバイオ燃料が、大きな比重を占めることになります。
下手をすると、裕福な人は、貧しい人の食糧を奪って自動車に喰わせることなりかねません。個人だけでなく、国家でも同じことが起きる可能性がある高いのです。
これを防ぐには、バイオ燃料に依存しないことと、食糧自給率の向上が必要不可欠です。

日本政府の中核は、この発想が極めて貧弱です。(野党も同じなのが辛い)
菅義偉氏が打ち出したカーボン・ニュートラルは、どこまで考えていたのか、寂しい気持ちになりました。

自民党総裁が決まりましたが、どの程度の視野の広さがあるのか、見てみたいと思います。