昔は、「有事に強い」と言われた円相場ですが、近年では有事でも円高傾向は見られなくなりました。

今回は、ロシアのウクライナ侵攻が発生した頃から円安が顕著になり、4月28日に一気に1ドル130円台を突破しました。
4月28日の円安は、日銀の発表内容に対する失望感が直接の原因とされますが、円が有事にも弱くなってきていることも、事実でしょう。


「有事に強い」と言われた要因は、対外純資産額にあると言われています。
正確には、有事には、ドル建ての対外純資産を売却して円に換金する可能性があるから、との考えもあります。
ただ、有事には円を買っておくとの単純化された思惑買いが多いとも言われています。
どんな理由にせよ、有事に円が強いのではなく、有事に円高になりやすいだけなのです。


日銀は、指値オペを実施しました。
日本国債の値崩れを防ぐため、日銀自ら買い支えているのです。
日本国債は、非常に危険な状況に陥っているのです。
(世の中には、軍備増強を叫ぶ呑気な方々がいますが、財政はそんな状況では・・)

誰も彼も、実情が見えていない。見ようとしていない。
そんな感じを受けます。


日本がやるべきことは、税収を増やすことと、歳出を減らすことです。
税収を増やすには、短期的には増税、長期的には経済成長です。
歳出は、非生産的な分野から削減するのは、常識です。

防衛予算や福祉予算は、生産性が低いので、本来であれば、削減の対象になります。
公共事業は、生産性があるように思われるかもしれませんが、単体では、生産性はありません。公共事業でできた建造物等が何かを生み出した時、初めて生産性を持ちます。
だから、どんな公共事業をするのか、吟味しなければなりません。

では、生産性が高い歳出先は、何でしょうか。
将来を見つめるなら、まずは教育です。
日本がアジアのトップを走り続けることができたのは、教育の充実ぶりでした。アジアだけでなく、欧米各国さえ凌駕する教育レベルが、日本の強みでした。
次が、研究開発費です。
新技術の開発や、基礎研究への投資が必要です。
視点を変え、生産性そのものの研究に力を入れていくのも、政策の一つになります。

現時点では、ノーベル賞受賞者が多い日本ですが、これは20世紀後半の日本の教育や評価です。これから先は、見通しが非常に暗いと言うしかありません。
昨年のノーベル賞受賞者である真鍋芳郎氏が小学校に入学したのは、1938年でした。受賞の83年前です。
日本人では最年少受賞者の湯川秀樹氏は、1913年に小学校に入学し、1949年に受賞しています。小学校入学から受賞まで36年も掛かっています。
今から教育に力を入れても、ノーベル賞受賞者数に現れるのは、今世紀の後半なのです。
だからこそ、今の内に力を入れていかないと、将来の国力に大きな影響が出ます。

「未来のために投資しても、その前に国が失われたら、意味がない!」
そんな意見が聞こえてきそうです。
だからこそ、外交で国を守るのです。
外交こそ、政治家の仕事です。
外交は、基本的に国民が関与できません。ほぼ、政治家の独壇場です。
これに対して、軍事力は、国民が命を張るものです。
自衛隊員も、戦争を始めることも、終わらせることもできない点では、普通の国民です。
戦争を始めるのも、終わらせるのも、政治家にしかできませんが、実際に現場で命を張るのは政治家ではありません。
だからこそ、政治家は、外交で国を守らなければならないのです。
外交で国を守りつつ、財源を未来の発展のために投資するのです。
そうでなければ、国民が命懸けで国を守っても、肝心の国は衰退してしまっては意味がありません。何のために命を懸けてきたのか、わからなくなります。

国力が落ちて最も怖いのが、際限のない円安地獄です。
日本は、食糧の2/3を海外から購入しています。
円安が進めば、軍事力で海外から侵攻を防せぐことができたとしても、国民は飢え、地獄のような国になってしまいます。
軍事力に財源を割く余裕は、日本にはないのです。
国民も政治家も、その現実を直視しなければなりません。
 


政治家には、外交を頑張ってもらい、余った防衛予算を教育や研究開発費に回して、未来の日本に投資してほしいものですね。
それが上手く機能した時、真の意味で「有事に強い円」が生まれるだろうと思います。