間も無く、長崎(だけ)新幹線が開業しますね。
長崎だけしか走りませんが、正式名称は『西九州新幹線』です。
では、『東九州新幹線』の計画はあるのでしょうか?
どうやら、あるようです。
あるようですが、これが・・・


鉄道の速度は、『表定速度』で評価します。
『表定速度』とは、2点間の平均時速のことです。
国内の最速は、東海道・山陽新幹線の『のぞみ64号』の224km/hだそうです。
在来線では、北陸本線の『サンダーバード9号』の104km/hが最速で、日豊本線の『ソニック22号』『ソニック33号』の97km/hが続きます。


さて、『東九州新幹線』に話題を戻しましょう。

『東九州新幹線』は、小倉駅から大分駅、宮崎駅を経由して、鹿児島中央駅までを結ぶ予定だそうです。(鹿児島中央駅は、東九州新幹線を考慮しているようには見えないが)
主要駅である大分駅、宮崎駅の所要時間の計画値も、以下のように発表されています。

小倉駅-大分駅    31分( 83分)
大分駅-宮崎駅    48分(189分)
宮崎駅-鹿児島中央駅 29分(129分)
〈※( )内は、現状の所要時間〉

時短効果は、かなりのものです。

ん?

そうです。
在来線では2番目に表定速度が高いのは、日豊本線の『ソニック』でしたね。
『ソニック』で83分も掛かるのに、新幹線が31分って、速すぎませんか?
距離を営業キロとして表定速度を計算してみると、260km/hになります。
東九州新幹線は整備新幹線なので、最高速度は260km/hです。表定速度は、最高速度の3/4くらいになるので、東九州新幹線の表定速度は、200km/hくらいになるはずです。

260km/hの表定速度は、速すぎます。

新幹線は、線形を直線に近付けるので、概ね在来線より1割くらい短くなります。
それを考慮に入れても、表定速度は233km/hです。
では、もっと直線的なルートが考えられているのでしょうか。
小倉駅から大分駅は、直線で100kmくらいです。真っ直ぐに線路を引けば、確かに表定速度は200km/hくらいになります。
ですが、真っ直ぐに線路を引くと、瀬戸内海に入り込むので、それは無理でしょう。
現実的には、線路長は110kmを切ることは無理だと思われます。
実際には、110〜120kmくらいになるはずで、表定速度を200km/hとすると、所要時間は33〜36分となります。

九州新幹線も、整備新幹線です。
博多駅-鹿児島中央駅は営業キロで288.9kmですが、最速は1時間16分です。
平均時速は、228km/hになります。
これを基に、小倉駅-大分駅間の営業キロで計算すると、所要時間は35分になります。

先程の計算例と併せて考えると、小倉駅-大分駅の所要時間は、35分くらいが妥当な計画値だろうと思います。


大分駅-宮崎駅間も、営業キロを228km/hで割ると、54分くらいです。
同様に、宮崎駅-鹿児島中央駅間も、33分となります。

随分と甘い計画ですね。



では、計画で書かれている所要時間は、どうやって計算したのでしょうか。

そもそも、ルートは全く検討されていないようです。
当然、正確な距離は、決められません。また、線形による制限速度も、わかるはずがありません。
それでも、所要時間が算出されています。
どうやって計算したのでしょうか。

どうやら、現在の営業キロを、整備新幹線の最高速度で除して算出したようです。

小倉駅-大分駅間は、132.9kmです。
大分駅-宮崎駅間は、207.0kmです。
宮崎駅-鹿児島中央駅間は、125.9kmです。
それぞれ260km/hで割ると、31分、48分、29分となり、完全に一致します。

随分と、いい加減な計算方法ですね。
こんな甘い計画で住民に誘いを掛けるテクニックは、例の宗教団体モドキから伝授されたのでしょうか。


因みに、同じ整備新幹線である北陸新幹線で、長野駅-金沢駅間の営業キロを所要時間で除した平均速度は、207km/hです。
これを基に、東九州新幹線のそれぞれの所要時間を計算すると、39分、60分、36分です。
これの方が、より現実的かもしれませんね。



さて、現状と比較すると、小倉駅と大分駅の間は、メリットは大きくありません。
最速のソニック22号、33号は、途中に行橋、中津、別府に停ります。
同様に停まるとすると、 停車時間を含め、9分毎に停ることになります。流石に、これだけ細かく停まると、表定速度も低下するはずです。現状のソニックとの比較で、所用時間は半減もできないかもしれません。
また、在来線は第三セクター化が条件でしょうから、大分県は、メリットとデメリットのどちらが大きいのでしょうか。
大分駅と宮崎駅の間や、宮崎駅と鹿児島中央駅との間は、時短効果が大きいので、意味があるかもしれません。
ですが、宮崎空港はアクセスが良いので、新幹線と第三セクター化を天秤にかけると、宮崎県も微妙でしょうね。

真っ当な政治家なら、新幹線を選択しないように思います。