アメリカのリージェント社が、地面効果翼機(WIG)の『シーグライダー』の飛行実験に成功しました。

地面効果翼機自体は、ロシアで研究が進んでおり、エクラノプランの総称で呼ばれます。
また、シンガポールでは『AIRFISH 8』が、中国では『翔州1型』等が、開発されています。
今の日本では、当然、研究は止まっています。

日本では聞くことがなくとも、世界的には珍しくない地面効果翼機の『シーグライダー』が話題になったのは、電動だったからです。
もう一つの特徴が、水中翼(水面効果型?)を持っていることでした。


地面効果翼機は、地面効果を利用して低空を飛ぶ航空機です。
翼面積に対して揚力が大きいため、小さな翼で飛行でき、翼が小さいため、抵抗が小さい特徴を持ちます。
概ね、翼長より低い高度を飛びます。
揚抗比に優れ、機体の大型化が容易なので、洋上輸送において、高速化が期待できます。
反面、飛行高度が低いため、一般の飛行場が使えず、飛行艇(または水上機)とならざるを得ず、洋上では船舶との衝突が懸念されます。更には、海象の影響を受けやすい欠点もあります。
日本で研究が停滞しているのは、近海に船舶が多く船舶との衝突が懸念されるため、実用化は難しいと判断されたようです。


『シーグライダー』ですが、1/4スケールの無人実験機です。
最高速度は290km/h、航続距離は290kmだそうです。
2年後を目処に、実寸大(翼長19.8m)の機体を製作し、定員6名の有人飛行を計画しているそうです。

『シーグライダー』を製作するリージェント社のビリー・タルハイマー氏は、「人類の輸送方法の歴史に新たな変化を起こした」と自画自賛です。
飛行艇と水中翼の組み合わせは、過去にも例があったように記憶していますが、地面効果翼機との組み合わせは、記憶にありません。

『シーグライダー』の水中翼は、水面効果型に見えます。(全没型の可能性もある)
水面効果型水中翼は、ロシアで発展した形式で、制御が不要で構造が単純なため、ロシアの河川で使われていました。
ですが、水面に沿って進む性質なので、平水面でしか使えません。
地面効果翼機も、飛行中も波の影響を受けますが、水面効果翼の方が直接的に波浪の影響を受けます。
なので、『シーグライダー』は全没型の可能性もあります。(外観では判別しにくい)
ただ、全没型は、水中翼の水深を維持するための制御機構が複雑になります。また、着水時の衝撃も考えると、収納型の水中翼には不向きです。(個人的には、水面貫通型の方が良いように・・・)



残念なことに、ニュースを伝える側の知識が乏しいようで、水中翼の種類や特徴を踏まえた取材ができていません。
なので、新機軸の良い面は企業側の主張から見当は付いても、どんな課題が残っているのか、どう対処していくのか、さっぱりわかりません。

当ブログでは、過去に『ジェットフォイル』として水中翼船について触れています。
関連ブログの『アイソスタシー』の5話には、地面効果翼機がちょっとだけ出てきます。
個人的には、強い関心を持ってきた技術です。
ですので、今後が気になっています。



前出のタルハイマー氏は、次のように続けています。
「沿岸地域への新たな旅行手段として、シーグライダーは歓迎されるでしょう。
2025年までに商業サービスとしてのシーグライダーの提供を目指します」

期待はしていますが、平水域に限定されるなら、日本での利用は難しいでしょう。