日本には無理だとわかっていますが、スーパージェット(以後、MRJと記す)の今後の利用を考えてみたいと思います。


日本政府は、『技術立国』を標榜しています。
少し出遅れになりますが、次世代の航空機の動力の研究と実証実験に注力するのです。

MRJは、FAAの認証こそ取得していませんが、日本国内の型式証明は取得しているはずなので、国内ならば、自由に飛べるはずです。
そこで、MRJをテストベッドとして改造し、エンジンや燃料タンクの性能を検証するのです。


温暖化対策として、航空機も、化石燃料を使用できなくなる可能性があります。
その対策案として、いくつかの案が考えられています。

・バイオ燃料(軽質油、メタノール、エタノール)
・水素
・電気

代表的なものとして、上記をあげてみました。
バイオ燃料は、現状の燃料タンクやエンジンの改良で、対応できる可能性があります。
一方で、高空の超低音環境でも安定した性能(流動性や燃焼性等)を維持できるのか、安定した品質で安定供給できるのか、等々、課題は数多くあります。

水素は、高い圧力と低温で保存しなければならないため、形状的に燃料タンクを翼内に設けることが難しい燃料です。
また、水素は、爆発限界が広く、金属に対して脆性を齎す、扱いの難しい燃料でもあります。
何らかの添加物により、爆発性を抑える研究は、有効と思われます。

電気は、エネルギ密度が低い欠点があります。

重量を基準にすると、電池のエネルギ密度は、化石燃料の1/20以下です。
更に、エネルギ充填速度も、非常に遅いのです。
現状の電池性能では、ダイバート(代替空港への着陸)さえ出来そうになく、定期便の電気飛行機は、実用レベルにはありません。
ですが、応用範囲が広い二次電池やキャパシタの研究は、国を上げて取り組む対象です。(もう手遅れの感はある)



実験室(場)で研究した電池や燃料、エンジン等は、次の段階として、実機での実証をしなければなりません。
そこで、MRJの胴体内に、水素タンクなり電池なりを搭載し、第二エンジンを換装するか、外翼にテスト用エンジンを追加搭載するのです。

こんなMRJの再利用を考えてみました。




なお、私なら同じ実証実験のテストベッドとして、MRJは使いません。
C2輸送機か、P1対潜哨戒機を、テストベッドにします。

理由です。

C2輸送機は、貨物室が広大で、貨物室を与圧することも、与圧を止めることも、自由にできます。
実験用燃料タンクにしても、電池にしても、計測機器にしても、搭載も撤去も容易です。

P1対潜哨戒機は、4発です。
エンジンの1基を実験用エンジンに換装しても、元々3発での離陸は可能ですし、対潜哨戒機としての機器を徹底して軽量化を図れば、V1後のエンジン故障で2発になっても、離陸を継続できるはずです。
エンジン用テストベッドとして、有利です。

それでも、MRJは、テストベッドの価値が残ります。
旅客機であるMRJに様々な改造を行うことで、メンテナンス性や安全性のケーススタディになるはずです。


日本政府は、軍事予算には充分な額を回しますが、科学・技術予算はギリギリまで絞ります。
典型は、『だいち3号』です。
打ち上げ費用の100億円を用意できず、試験機に相乗りさせることで、打ち上げ費用を浮かせようしました。

そんな日本政府が、MRJを有効利用しようとは考えないでしょう。
そんな予算を付けるくらいなら、ミサイルを買いたがる国ですから。