地震予知研究者に共通する問題点は三つありますが、
今回は「経験則、あるいは宏観現象に頼っている」点について、解説したいと思います。


巷の地震予知は、何らかの現象と巨大地震との関係を基にして行われています。
巨大地震と関係があるとされる現象は、例外なく偶然によって見つかっています。
日頃とは違う珍しい現象を経験した後に巨大地震が発生すると、私達はついつい
ああ、あれは前兆だったのか!」となるのです。
これが、俗に言う「宏観現象」です。

近年、様々な観測機器が開発され、観測結果もネットで公開されるようになったため、
一見、科学的に見える観測データも、宏観現象となり得るようになってきました。
その一例が、地震解析ラボが地震予知に使用する電離層の擾乱であり、
あるいはJACEAが用いる電子基準点のデータでしょう。

では、経験則、あるいは宏観現象は、何が問題なのでしょうか。
それは、地震との関係があると言い切れないことにあります。
なぜ、地震との関係に疑問があるのでしょうか。
第一に、宏観現象は地震より前に発生し、かつ地震発生前に終息していることにあります。
地震発生前に始まり、地震発生と同時に終息する現象であれば、前兆現象だと考えても
おかしくありません。
ですが、現象が地震発生前に終息するなら、それは地震とは無関係と考える方が自然です。
現象の終息から地震発生までの間を説明できない場合は、宏観現象でしかないのです。

第二に、前兆現象が発生する場所は、震源域の直上か、極めて近い場所であるはずですが、
巷の地震予知の中には、数千キロも離れた場所の現象と巨大地震とを関係付けている例も
あります。
地震は、マグニチュード7クラスでも、震源域の長さは概ね50キロ以下です。
数百キロや数千キロも離れた場所に前兆が現れるはずがありません。
震源域から離れた場所にも現れる現象は、宏観現象に過ぎません。


なぜ、このような疑義が生じる宏観現象を、地震の前兆と思い込んでしまうのでしょうか。
それは、地震と前兆の関係を論理的に思考しない事にあります。

一つは、地震予知の三要素(時期・規模・場所)を区別せず、単純に巨大地震と現象を
結び付けようとするところにあります。
二つには、地震と現象の関係を評価、検証しようとはしない事にあります。
偶然の可能性は無視し、悪魔の証明を逆手に「偶然とは言い切れないから前兆に違いない」
と考えてしまう姿勢に問題があるのです。

このような研究姿勢では、地震予知に成功する可能性は一枚だけ買った宝くじが一等に
当たる確率より遥かに低いでしょう。
だから、研究に向かう姿勢を改めなければならないのです。


-地震予知研究の手引き(現状の問題点2)-