地震予知研究の問題点について説明てきましたが、
今回は、「地震予知の三要素の全てを一つの手法で予測しようとする」件について、
説明します。


そもそも、巷の地震予知は、宏観現象を頼りにしています。
ですが、宏観現象と言えど、そうそう見つける事が出来るわけではありません。
だから、地震予知の三要素である時期・場所・規模のそれぞれに対応する宏観現象
揃える事は、それなりに難しいのです。
また、理論から導いていないので、宏観現象を見つけた際に三要素のどれと関係するのか、
考えもしないのです。
そのため、宏観現象から導き出す地震予知の三要素も、実にデタラメです。
では、巷の地震予知は、三要素をどのように決定しているか、簡単にまとめてみましょう。

1.時期
   多くは、経験に基づき、前兆とする宏観現象から地震発生までを固定値としている。
   宏観現象からの演算などで時期を決める事は、ほぼない。

2.規模
   宏観現象に比例して、推定する地震の規模を大きくする事が多い。
   ただし、宏観現象と地震の規模の関係は、ほとんどの場合、感覚的に決めている。

3.場所
   宏観現象の発生場所付近を地震の発生場所とする事が多いが、地震雲のように方角を
   特定するだけの場合もある。
   また、地震が発生すると見込まれる範囲と、宏観現象の関係は、明確ではない。


基本的に、宏観現象は地震の規模の予想にのみ使用し、時期や場所は規模に応じて広げる
傾向にあるように思います。
なぜ、このような傾向にあるのでしょうか。


一つには、宏観現象の発見プロセスにあります。
珍しい現象が発生した直後に巨大地震があると、その現象を前兆と思い込んでしまいます。
この前兆と思い込んでしまった現象が宏観現象です。
なので、宏観現象から地震まで間隔は、経験以外に特定する手段を持ちません。
結果、時期は固定的な値となるのです。

具体的に見てみましょう。
早川氏の場合、概ね電離層擾乱から3週間以内に地震が発生するとしています。
この値は、ほぼ固定されています。
村井氏の場合は、宏観現象の典型的な傾向を、時期の変遷から見て取れます。
彼は、当初は「電子基準点の異常から5週間以内に地震が発生する」としていました。
その後、5週間2~3ヶ月になり、半年になり、8ヶ月半になりました。
そして、熊本地震を経て今は2年に延びようとしています。
元々、時期に根拠がありません。だから、安易に伸ばしていけるのです。


二つめです。
三要素の中でも、地震の規模と宏観現象の関係付けは、意外にもデタラメです。
宏観現象は、地震の前に発生する現象ではなく、巨大地震の前に発生する現象なのです。
ですので、宏観現象と地震の規模との関係は、最初から無視されているのです。
つまり、「宏観現象は巨大地震の前にしか起きない」と、決めつけているのです。
ですが、地震の前兆があるのなら、観測の難易度はあるとしても、地震の規模に関係なく
前兆が現れなければ不自然です。
ですが、元々が珍しい現象なので、「有る」、「無い」の二つになる事が多いのです。 
それ故、宏観現象と地震の規模との関係は曖昧になってしまうのです。


総じて言える事は、経験的に見つけた貴重な宏観現象にしがみ付き、「前兆に違いない」
との考えから、無理矢理、地震との関係付けを行おうとしているのです。
その結果、地震予知の三要素は蔑ろにされ、曖昧な地震予知となるのです。


さて、折しもイタリアで大きな地震が発生し、サッカーの本田圭佑氏が地震予知研究への
サポートを申し出ました。
本田氏には頭が下がる思いですが、
残念なことに、地震予知研究の分野は錬金術師が跋扈する世界です。
本田氏のサポートが、有効に使われることを願わずにいられません。
本題目についての記事は、今後も1週間程度は続く予定です。
もし本記事が本田氏の目に触れる事があれば、少しはサポート対象を判断する材料に
なるのではないかと、(傲慢にも)思っています。


-地震予知研究の手引き(現状の問題点4)-