豊葦原中津谷のニニギ

食糧自給率の向上を目指して! (2100年の日本へワープ)

カテゴリ: 研究機関など

しんかい6500と言えば、支援母船のよこすかを無視することができません。

よこすか全景

ですが、調査船と聞くとコンテナを無視できないのが、伊牟田の悪癖です。

まずは、この写真を見てください。


コンテナ

このアングルは、毎年のように撮影しています。
2016年のコンテナ
2017年は下の写真
コンテナ2017

これらのコンテナには、実験装置が詰め込まれているそうです。
いざ、調査船で調査に行こうとなった際には、コンテナを調査船に積み込みます。
よこすかも例外ではありません。
ただ、しんかい6500を運用するので、昨年のかいめいとは違いがあります
典型がこれでしょう。


IMG_1084

よこすかは、格納庫内にコンテナを搭載しています。
それも、2階部分です。

よこすかにはコンテナのサイズにもよりますが、最大でも6個しか搭載できないそうです。
船体はほぼ同規模のかいめいが10個以上も搭載できる点で、目的の違いを感じます。


コンテナ・オタクの伊牟田の戯言は、これくらいにしておきましょう。 

昨年は展示がなかったしんかい6500ですが、今年は展示されていました。

昨年に行われた耐圧殻内の大改修後では、耐圧殻の状態も確認されました。

潜水調査船において、耐圧殻は、浮力材と並んで重要な技術です。

 
しんかい6500全景


中国の7000m級潜水調査船蛟竜は、耐圧殻はロシア製、浮力材は欧州の市販品
使用しているそうです。(しんかい6500は、いずれも日本製)

蛟竜の運用最大潜航深度はしんかい6500上回る7000mですが、
安全限界でみると、しんかい6500の10050mに対し、
蛟竜は9625m(あるいは7700m)となっています。

蛟竜しんかい6500を超えることを目標としていたので、
少々無理をしているように思えます。

それは、ライフサポート時間(緊急時の生存可能時間)にも現れていて、
しんかい6500の129
時間に対して、蛟竜は84時間と短くなっています。

もちろん、設計が20年も新しいので蛟竜の方が優れている点もあるのですが、
乗るのはちょっと怖いですね。

 

 

さて、しんかい6500の耐圧殻ですが、実物を作る前に試験を行っています。

JAMSTEC横須賀本部には、その試験装置があります。


高圧水槽実験

実物の3分の1ほどのサイズの耐圧殻を試験装置に入れ、圧壊するまで加圧しています。

その結果、目標深度6500mの約2倍の13200m相当の圧力まで耐えています。

下の写真は、13200m相当の圧力で圧壊した試験用耐圧殻です。


耐圧殻圧潰
 

昨年の大改修で、耐圧殻の検査も行われましたが、製造当時の状態が今も維持されていた
そうです。

近年、後継機しんかい12000の話が出ていますが、中々予算化が進んでいません。

しんかい6500でも13000mに耐えられるから、
しんかい6500でマリアナ海溝も潜ってしまえばいい」と冗談が出るほどだそうです。

 

ちなみに、しんかい6500は老朽船です。

老朽船とは、船齢が20年を越えた船を指します。

しんかい6500は、1989年に完成していますから、30年近い運用実績があります。
潜航回数も1500回を超えており、数々の成果と共に、30年に渡って世界の先端を
走り続けてきた性能と信頼性は、誇るべきものだと思います。

どこかの誰かは、「2位じゃダメなんですか?」とおっしゃいましたが、
30年も経過した老嬢にこれからも仕事をさせるのではなく、
しんかい12000を建造し、役割を分担させていくべきだと、私は思います。

JAMSTEC横須賀本部の2018年一般公開に行ってきました。
展示船は、昨年、一昨年とかいめいでしたが、今年はよこすかでした。

よこすか1

御存知の通り、よこすかは、しんかい6500の母船です。

しんかい6500

しんかい6500は、昨年は改修中だったので、展示されていませんでした。
今回は、横須賀本部での一般公開では、改修後は初めて展示のはずです。

ところで、4月には宮崎でよこすかしんかい6500を展示しています。

つまり、よこすかしんかい6500を搭載していたのです。
では、どうやってしんかい6500を下ろしたのでしょうか。
質問してみたところ、よこすかを船尾付けで接岸して下ろすのだそうです。
今回も、まず船尾付けで接岸してAフレームクレーンでしんかい6500を下ろした後、改めてよこすかを左舷付けで接岸したのだそうです。
よこすか

残念ながら、腰痛が出てしまい、思うように行動できませんでした。
と言いつつ、いくつか面白いネタも仕込んできましたので、機会を見て紹介していこうと思っています。


今回も、色々と見て回りましたが、前回とは異なる点もありました。

前回は、研究者の方から「セミナーを聞いて頂き、ありがとうございます」と声を掛けて
頂きました。
観察力が優れた方なのでしょう。
影の薄い私を見つけてくださいました。

今回は、どなたからも声を掛けられることなく、幽霊のように歩き回りました。
前回、声を掛けて下さった方は、お見かけしませんでした。




子供向けの展示も多くありました。
そのなかであ、意外にハマったのが、ペットボトル・トルネード!
ペットボトル・トルネードは、
二つのペットボトルの口を繋ぎ合せ、一方のペットボトルから他方へと水を移動させる
砂時計のような実験道具です。⌛️
ペットボトルトルネード
https://twitter.com/nijinogesuidou/status/873698812467920898

砂時計との違いは、砂が液体の水に変わっている点です。この違いから、砂時計のように
天地をひっくり返しただけでは、ボコボコと泡が湧き上がりながら、ゆっくりと水が落ちていきます。
でも、ボトルを回して渦を作ってあげれば、渦の中心を空気が流れ、一気に水が落ちていくのです。

さて、当日ですが、スタッフの皆さんも、見学者の皆さんも、なぜかボトルを時計回りに
回して、時計回りの渦を作っていました。
確かに、右利きはボトルを時計回りに回す方が楽なのですが、「あれ? コリオリの力って、この向きだっけ?」と思い、ボトルを手に取りました。
よくよく考えると、コリオリの力に素直なのは、反時計回りです。
そこで、反時計回りの渦を作ってみました。
時計回りの渦と、差はありませんでした。
更に、弱い渦を作って強い渦に成長するか、試してみました。
何回か試したですが、これも差がありませんでした。

夢中になりすぎていることに気付き、子供達向けの実験道具で大人気ないと、その場を退散することにしました。




これ以外では、植生のシミュレーション、津軽海峡から三陸沖の海流シミュレーション等、興味深い展示もありました。
ここでは、日本海の熱塩対流の低下等について、質問させて頂きました。

また、DONETを見ていると、毎分2〜5回くらいの地震を検出していました。
陸から離れているので、人工的なノイズが少なく、高感度の地震計が微小地震まで捉えて
いるようでした。




先日、発表されたスパコン・ランキングでは、JAMSTEC横浜研究所の『暁光』が
世界4位、国内最速と認定されました。
暁光

様々なシミュレーションを支えるのはスパコンですが、世界4位に甘んじるのは面白くありません。それでも、ランクインできるスパコンが増えれば、研究者のメリットになります。

性能と共に、研究者に割り当てられるマシンタイムも増加することを願っています。


気象予測をテーマの一つに掲げる私の関心は、気象シミュレーションに集まりがちでした。
気象予測は、気象シミュレーションのような大規模なものではなく、期間・地域・精度を
限定することで、パソコンで中・長期の気象を予測することを目的としています。
ですので、気象シミュレーションの成果と課題には、強い関心があるのです。




まずは、「氷河期ってどんなとき?シミュレーションでわかること」から。

ここでは、シミュレーションの強みを活かして、氷河の影響の有無を検証していました。
寒冷化で氷河が発達すると、地球の反射能が高くなるので、暖まり難くなります。
当然、気温は低くなります。
氷河の発達を考慮せず二酸化炭素濃度(氷河期は現在の半分程度)のみで計算した場合と、氷河の発達も考慮した場合では、それぞれ約4℃と5℃の低下になるそうです。
これは、温暖化においても、氷河の後退や極地の棚氷・海氷の減少が影響を大きくすることを意味しています。(いわゆるアルベド効果)

もう一つ、前回も触れた真水の流入です。
『ザ・ディ・アフター・トゥモロー』の舞台背景にもなったカナダ沖への真水の流入を、
シミュレーションされていました。
カナダ沖は、深層海流の沈み込み海域の一つとされ、これが北半球の戻り氷期の原因と
見られています。
シミュレーションでは、真水の流入が500年間も継続する設定で計算していましたが、
北半球で気温が低下する現象が見られました。
私が着目したのは、真水の流入に対する気温の反応です。
記憶に基づくので正確ではありませんが、気温の低下は真水の流入直後から始まりますが、気温の上昇は真水の流入が止まってから100~150年くらい遅れることです。
このシミュレーション結果は、将来的に地球温暖化の対策が行われたとしても、気候が元に
戻るまで長い時間がかかる危険性があることを示しているように思いました。


逆回転シミュレーション
https://twitter.com/JAMSTEC_PR/status/929240505686245377
地球の自転を逆に回した場合のシミュレーションでは、海流や気象が安定するまで500年くらい必要だと教えていただきました。
先程の『氷河期~』のシミュレーションでの例も踏まえると、新しい気候へと遷移する場合
安定するまである程度の時間がかかるようです。
温暖化が気候の遷移を意味するなら、今後、気候が不安定化していくのではないかと、私は危惧しています。


では、なぜ気候は不安定になるのでしょうか。
素人研究者の私は確たる根拠を持っていませんが、一時的に熱塩対流が停滞するためでは
ないかと、考えています。
熱塩対流が停滞すると、浅海と深海が熱的に切り離されたような状態になり、海洋の熱容量が減ってしまうと考えられます。
このような状態にある時に何らかの要因で気候がブレた場合、その変動を吸収しきれずに、極端な気温の上下動を起こすことになります。

数百年が経過すると、氷河が消失することで真水の流入が減少したり、二酸化炭素濃度の
上昇が頭打ちになることで、熱塩対流は徐々に回復するのでしょう。熱塩対流の回復は、
見た目の熱容量の回復であり、気候も安定していくのだろうと、推定しています。

氷河期~』のシミュレーションでは、真水の流入で一時的に北半球は寒冷化しましたが、南半球ではやや温暖化していました。これは、北半球に陸地が多く、南半球には少ないことが影響しているのではないかと思います。
陸地は、海より熱容量が小さいので、北半球は南半球より熱容量が小さいと見なせます。
元々、北半球と南半球の大気は入れ替わりが少なく、北半球の影響が南半球に伝わるまで
時間がかかります。
なので、北半球の気候変動を南半球でカバー出来ないのです。
南北の気温の差は、ここに要因があるように思います。




さて、こうなると、シミュレーションの結果が気になります。
そこで、シミュレーションで気候の不安定化の兆候が現れていないか、質問してみました。
残念ながら、そのような観点でのシミュレーション結果をチェックしたことはないらしく、シミュレーション内で気候の不安定化を確認することはできませんでした。



シミュレーション関係の最後は、シミュレーションの再現力です。

別の機会にも書いていますが、シミュレーションを行う上で、有効桁数は問題になります。
複雑な計算をする毎に有効桁数は減っていき、場合によっては有効桁数は無くなってしまうこともあります。
そのようなシミュレーションは、結果を信用することができません。

そこで気になるのが、
マッデンジュリアン振動エルニーニョ/ラニーニャがシミュレーションで再現できたのか?
という点です。
キチンとシミュレーションできていたのなら、マッデンジュリアン振動やエルニーニョ等も
再現できるはずです。

くぅー!
無念!


研究者に質問するのを忘れていました。
当日に思いつかなかったのなら諦めるのですが、セミナーを聞いていた時には、
「そうだ! マッデンジュリアン振動の再現は?」と思っていたのです。
来年こそ、聞こうと思います。


JAMSTEC横浜研究所は、地球シミュレータがあるせいか、シミュレーション系の展示が多くありました。
私個人が期待する研究としては、温暖化のシミュレーションにおいて、気候の不安定化が
起きるのか否かをテーマにした研究を見てみたいと思っています。
その研究を行うためには、『気候の不安定化』の定義から始めなければならないでしょうし
シミュレーションの有効桁数の問題も、ハードルの一つになるのかもしれません。

そのあたりをクリアし、私たちに未来を見せて頂きたく思っています。


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