世界は、FCVではなく、EVへ向かっています。ZEVでもなく、EV一辺倒です。
2014年には、フォーミュラeが始まっています。
更には、EVラリーやEV耐久レースも開催されています。
日本は、脱炭素社会への変革で、大きく出遅れている上、モーダルシフトの面でも、ローカル線の廃線のように、完全に方向性を失っています。
唯一、自動車分野だけが、何とか世界の潮流についていっているのが、現状でしょう。
これに、他の業界が追随することが望まれます。
でも、もっと重要なのは、メディアを含む一般人が、エネルギの地球温暖化対策の最終形をイメージできるようになることです。
さて、エネルギの地球温暖化対策は、一般に『電動化』と『再生可能エネルギ』の組み合わせが思い浮かぶでしょう。
ですが、再生可能エネルギは、出力の制御ができないため、電力系統を安定的に運用できません。
この問題を解決できないため、再エネ発電の買取量に制限が課せられています。
問題の解決は、電力会社に押し付ける風潮がありますが、これでは解決はできません。
「科学技術は発展するので、将来的には解決する」と言う人もいます。これは、「原発事故も、科学技術が発展する未来には、問題なくなる」と置き換えたなら、いかに無責任な考え方なのか、理解できるでしょう。
そもそも、科学技術は、人間が発展させるものであって、時間経過で勝手に発展するものではありません。
再生可能エネルギの変動を吸収し、電力の安定供給を可能にするための手段として、次のようなアイデアがあります。(一部、実用化しているものもある)
(1)揚水発電
水の位置エネルギで、電力を蓄えます。
しかし、国内で建設できる所は少なく、新規に蓄電量を増やすことは難しいでしょう。
(2)二次電池(蓄電池)
化学エネルギに変換して、電力を蓄えます。
リチウムイオン電池の場合、最大で約250kWh/tの重量エネルギ密度です。
(容器や制御装置は含まない)
日本の年間発電量は、1兆kWhを超えます。1日平均で、300億kWhです。
1日分の電力を蓄えるには、1億tを超える二次電池が必要になります。
夏場の太陽光で発電した電力を、冬場に使用することも考えられるので、ロスを無視するとしても、数十億tの二次電池が必要になりそうです。
これは、現実的ではありません。
(3)水素
水素の化学エネルギで、電力を蓄えます。
水素は、約4万kWh/tのエネルギ重量密度です。
二次電池(Li+電池で計算)との比較で、エネルギ重量密度は100倍以上です。
また、電池ではないので、単純なタンク(冷凍機能は必要)に保管できます。
そのため、実質的なエネルギ密度は、200倍以上になるでしょう。
更には、リチウム等の貴重な資源も、基本的に使いません。
ただし、効率が低く、水の電気分解に使用した電力の内、最終的に水素燃料電池で取り出せる割合は、23〜52%程度です。これに、水素を液体で維持するための冷凍機にも、大量の電力を消費します。
ここまで、3種類のエネルギを蓄える方法を考えました。
エネルギ備蓄で現実的な選択肢は、水素です。
もちろん、問題は山積みです。
二次電池で同等の電力を保存しようとすると、エネルギ密度が桁外れに足りません。
再生可能エネルギで全電力を賄うことを考えると、1年を通じた発電量と蓄電量の管理が必要になります。
そのため、前述のように、莫大な量の電力を蓄えておがなければなりません。
こういった課題を理解すれば、なぜJRが水素ハイブリッド電車を作るのか、その目的が見えてくると思います。
発電の脱炭素化を電力会社に押し付けるのではなく、広い視野で考えるようにしたいものです。