琵琶湖の北部の湖底で、無酸素状態になっています。
全層循環が起きないと、琵琶湖の湖底付近に酸素がもたらされなくなります。
日本海には、固有水と呼ばれる海水があると考えられています。これは、日本海を取り囲む地形によるものです。
直接の原因は、琵琶湖の全層循環が2年間に渡って起こらなかったことによるものと考えられています。
2019年に全層循環が起きなかったことは、当ブログでも取り上げています。
今年(2020年)も、全層循環が起きていません。
琵琶湖の全層循環は、冬季の寒気で湖面が冷やされて起きると考えられています。
また、長浜市南浜付近で琵琶湖に流入する姉川も、雪解け水を流し込むことで、全層循環を補助しているかもしれません。
これらが、暖冬によって機能しなかったのです。
全層循環が起きないと、琵琶湖の湖底付近に酸素がもたらされなくなります。
湖底には、光はほとんど届きません。そのため、光合成はできず、酸素は供給されません。全層循環は、表層で光合成によって作られた酸素を湖底に運ぶ役割を担っています。
全層循環が起きないと湖底が低酸素になるのは、このような理由によるものです。
湖底付近の酸素量が低下したため、底生の生物に影響が出始めています。スジエビやイサザの死骸も見つかっているそうです。
今冬も全層循環が起きなかったなら、更に深刻な状況になります。
湖底の酸素が少ないために、リンや窒素が出やすくなり、湖水の富栄養化でアオコの発生リスクが高まります。
底生生物だけでなく、湖全体の生態系に不可逆的な変化を引き起こすかもしれません。
湖底の無酸素化は、琵琶湖に近い三方五湖でも起きています。
三方五湖の一つ、水月湖は、過去数万年間に渡って湖底が無酸素状態に保たれました。そのため、湖底は生物によって荒らされず、見事な年縞を残しました。
こちらは、人類に過去7万年余りの貴重な情報を残してくれましたが、琵琶湖の湖底の無酸素化は、災厄をもたらすことになりそうです。
ここまでは、琵琶湖について書いてきましたが、同じことが日本海でも起きようとしています。
このことも、当ブログで触れたことがあります。
日本海には、固有水と呼ばれる海水があると考えられています。これは、日本海を取り囲む地形によるものです。
日本海は、朝鮮海峡(対馬海峡西水路)、対馬海峡(東水路)、関門海峡、津軽海峡、宗谷海峡、間宮海峡で外と繋がっていますが、朝鮮海峡や対馬海峡、津軽海峡でも、水深は150mもありません。そのため、深部の海水は入れ替わりにくく、日本海固有水と呼ばれる安定した海水が存在すると考えられています。
その日本海も、琵琶湖に似た垂直方向の全層循環があります。これが止まると、日本海の底部でも無酸素化が進みます。実際、過去には日本海の深海部が無酸素状態になったことがあると言われています。
日本海の全層循環も、琵琶湖に似ています。
基本的には、表層水が冬季に冷却されて、日本海盆へと流れ落ちることで起きるとみられています。特に、アムール川がもたらす雪解け水や海氷によって、間宮海峡付近で下降流が起きるようです。
ですが、地球温暖化やアムール川周辺の経済活動の影響で、日本海の全層循環が弱まってきていることがわかっています。そのため、日本海の深海部で、溶存酸素量が減少し始めています。
日本海は、およそ100年程度で全層循環が一巡すると考えられています。ですので、比較的早く、温暖化の影響が出ると言われています。
おそらく、今世紀中、早ければ今世紀半ばには、日本海の生態系に影響が出るのではないでしょうか。
日本海で起きることは、太平洋などの大洋でも起こります。
大洋の全層循環は、1000年単位と考えられています。これの怖さは、完璧な対策を実施したとしても、その効果は1000年以上も後に出ることです。
私たちが認識しなければならないことは、「対策を急がねばならない」ということです。
早く対策すれば、それだけ影響が出る期間を短くできることです。
海洋と比較すれば、琵琶湖は小さな水溜です。それ故、地球温暖化の影響が早く出ます。
琵琶湖で起きることは、少し遅れて日本海でも起きます。
日本海で起きることは、更に遅れて全海洋でも起きます。
琵琶湖が発する警告を、私たちは真摯に受け止めなければなりません。