SpinLaunchは、遠心力でロケットを打ち上げる装置のテストに成功しました。
この装置は、カタパルトの一種で、同じ場所で回転しながら加速します。
充分な速度に達したら、上に向かって解き放つのです。
わかりやすく言えば、遠心力で打ち上げるのです。
名付けて、「グルグルポーン」?
(ネットニュースでは、そんな名称だったような・・)
ただ、その力だけでは宇宙空間には届かないし、真上に打ち上げたなら、大気とコリオリ・フォースの影響分だけ離れた地面に落ちてきます。
なので、ロケットの力で軌道に乗せます。
さて、試験機は、どの程度の性能なのでしょうか。
実験では、回転半径は54ft(16.46m)で、10000Gを達成したそうです。
なので、周速は1270m/s(マッハ3.7くらい)です。
空気抵抗を無視すると、上空82kmくらいまで届きます。(まだ大気圏内です)
回転数としては、737rpmなので、大したことはありません。
100km/hで走行中の乗用車のタイヤの回転数とほぼ同じです。
ただ、装置からロケットを切り離す時、ロケットの質量分は、重量バランスが崩れます。
SpinLaunchのペイロードは、200kgだそうです。
10000Gも掛かっているので、2000000kgf相当の不釣り合いが生じます。
おそらく、かなり激しい振動が起きるでしょう。
自動車でホイールバランスが崩れた車を運転したことがある方は、ハンドルが振動する経験をされていると思います。
自動車のホイールバランスの許容値は、5gだそうです。(通常は1g以下にする)
ホイール径を16inch(215-60R16)とすると、100km/hの時は145G程度です。
5gのアンバランスは、0.7kgf程度です。
タイヤとホイールで、20kg弱が一般的なので、重量と質量の比較になってしまいますが、1:20の比率が目安になりそうです。
タイヤのアンバランスは、0.7kgfですが、SpinLaunchは、2000000kgfものアンバランスです。
数十万倍から数百万倍のアンバランスなので、装置を破壊しかねません。
共振周波数を外そうにも、減速・停止させなければならないので、共振周波数を通過することになります。
ホイールの質量を大きくして相対的にアンバランスを小さくしようにも、前述の1:20を基準にするなら、ホイールの質量は2000tにもしなければなりません。
これは、現実的ではありません。
どんな対策を講じるのか、興味のあるところです。
(今回の試験では、発射していないので、アンバランスは発生していない)
SpinLaunchは、周速が速いため、ロケットが受ける空力上の負荷も、馬鹿にできません。
地表付近での1270m/sは、圧縮や摩擦による加熱は、とんでもないことになります。
また、ロケットの全長を2mと仮定すると、ロケットの先端は、正面ではなく、3.5度の角度で風を受けることになります。
大した角度ではないし、マッハコーンの内側に収まる範囲なので、問題はないのかもしれませんが、気になるところです。
個人的には、直線的なカタパルトと、無人母機の組合せが良いと思っています。
それでも、SpinLaunchは面白いアイデアなので、期待する気持ちもあります。
発射場は、おそらく高地に設置するのでしょう。
空気が薄くなるので、空力的な問題も、緩和されるはずです。
SpinLaunchの今後を、期待したいと思います。