先日のテレビドラマで、一酸化炭素が充満する室内で酸素を吸って生き延びる場面がありました。

一酸化炭素中毒は、酸素より一酸化炭素がヘモグロビンに結びつきやすいことで発生します。これにより、肺呼吸で酸素を取り込めなくなり、全身が酸欠を起こして死に至ります。

となると、単純な酸欠ではないので、『酸素を吸えば良い』と言うものではないことが分かります。
ただ、少しは酸素分圧が上がるので、その分は中毒になる一酸化炭素濃度も高くなるはずですので、多少は助かる可能性は高まるでしょう。と言っても、決定的な差にはならないと思います。

もう一つの問題は、酸素のボトルを手放してから脱出するまででです。
肺でガス交換した血液は、精々20秒ほどで全身に回ります。一息でも吸えば、20秒以内に全身が酸欠を起こして動けなくなるのです。
坑道などで起きる酸欠事故で、作業員が一歩も動けずにその場で倒れてしまうのは、一息吸っただけで致命的な酸欠を起こすためです。
一酸化炭素中毒も酸欠ですので、同じことが起きるはずです。
一直線に脱出するなら可能性はあるかもしれませんが、証拠隠滅をしようとするなら、まず助からないだろうと思います。

ドラマなのですから、多少の科学的な問題は気にする必要もありません。むしろ、犯罪のヒントになるような精度でドラマを作る方が問題ですから、これで良いと思います。
単純に、エンターテイメントとして楽しめば良いのでしょう。


ただ一つ、懸念を申し上げるなら、一酸化炭素中毒を甘く見ることにならなければと思うくらいです。
まあ、使い途のない知識ですけど・・・