小選挙区制は、得票率と獲得議席数が一致しません。
小選挙区で投じた私達の1票の重みは、与党に投票した場合と、野党に投票した場合とでは、約3倍の差があるのです。
最高裁では、1票の重みが2倍以上になる場合は、違憲であると定めています。
条件は異なりますが、現状は違憲状態と言っても良いのです。

私が、小選挙区制度の見直しを主張するのは、このような実態を危惧しているためです。



具体的な数値を見てみましょう。

データは、総務省のHPから入手しました。
総務省は、2007年から2022年までの、4回の衆議院議員選挙と、6回の参議院議員選挙の政党別得票数、獲得議席数等を、公開しています。(補欠選挙を除く)


10回の国政選挙の小選挙区では、延べ5億5000万票余りが投じられました。
そして、延べ1611議席が確定しました。

この内、与党(自民党+公明党)は、約2億5000万票を得票し、1156議席を獲得しています。
1議席を得るために必要な票は、21万6253票でした。

野党は、与党より多い約3億票を得票しましたが、獲得議席は455議席でした。
1議席を得るために必要な票は、65万9750票でした。

このように、1票の重みは、10回の国政選挙の平均で、3.05倍でした。
これは、かなり深刻な差です。


では、比例区はどうでしょうか。
投票数は、ほぼ同じです。
確定した議席数は、延べ1009議席です。

この内、与党(自民党+公明党)は、約2億4600万票を得票し、495議席を獲得しています。
1議席を得るために必要な票は、49万7498票でした。

野党は、与党より多い約3億4200万票を得票し、514議席を獲得しました。
1議席を得るために必要な票は、59万1916票でした。

このように、1票の重みは、10回の国政選挙の平均で、1.19倍でした。


※小選挙区より比例区の方が、1議席に必要な票数が多いのは、小選挙区より比例区の方が議席数が少ないためです。


小選挙区では、1票の格差が3倍にもなっていますが、比例区では、1.2倍程度です。
この違いは、選挙制度によるものと考えられます。

では、なぜ小選挙区制では、1票の格差が広がるのでしょうか。
小選挙区では、当該選挙区で最多得票を得た候補者1人だけが、当選します。

仮に、有効投票数が100票の選挙区に、4人が立候補したとし、考えてみましょう。

【例1(小選挙区)】
A党の候補は固定票を8票持ち、B党の候補の固定票は7票、C党の候補の固定票は5票、D党の候補の固定票はないとします。
浮動票は、4人は拮抗しているとすると、浮動票は各候補に20票ずつとなります。
合計は、A党の候補は28票、B党の候補は27票、C党の候補は25票、D党の候補は20票となり、当選はA候補になります。
この場合、A候補に投票した28票は、国政に反映されますが、残りの72票は、無駄になります。
また、全ての選挙区で同じことが起きれば、得票率が28%の党が、全議席を独占できることになります。

【例2(2人区&候補者一本化)】
これが、定数2名の選挙区なら、どうでしょうか。
各党が候補者を一本化した場合、各候補の得票は前述と同じですが、当選者はA党の候補とB党の候補の2人になり、45票が国政に反映されます。

【例3(2人区&候補者乱立)】
A党は、2議席を独占するために、2人の候補を出したとします。他の党は、候補を1人に絞ったとします。
各党の固定票は同じとすると、A党の候補の固定票は、それぞれ4票になります。
他の政党の候補は、1議席の時と同じです。
浮動票は、拮抗していて、それぞれに16票が流れるとします。
すると、A党の候補は、それぞれ20票、B党の候補は23票、C党の候補は21票、D党の候補は16票となり、当選はB党の候補とC党の候補になります。
この場合、46票が国政に反映されます。


このように、小選挙区では、少ない固定票でも、議席を独占できるのです。
実際に、固定票に強みを持つ与党は、低い得票率で、多くの議席を獲得してきました。

安倍晋三氏は、歴代総理大臣で最長の在任期間でしたが、その間に行われた国政選挙の自民党の得票率は、常に40%以下でした。
与党を構成する公明党を加えても、過半数を超えたことがありません。
ですが、議席数は60%以上を維持できたため、長期政権となりました。
特に、2012年の衆議院選挙では、自民党・公明党連合は、小選挙区において、他の党との1票の格差が5.6倍にもなりました。
これでは、小選挙区の投票は、余りに不公平です。



得票率と獲得議席数が一致しない現状は、このまま見過ごすことはできません。
何としても、改善しなければなりません。

ですが、新しい選挙制度の提案がないのなら、制度の改善はできません。


次回から、様々な提案をしながら、日本に相応しい選挙制度を考えていこうと思います。