コスタリカの動物園で、16年間に渡って、ほぼ単独で飼育されていた雌のアフリカワニが産卵し、その卵も孵化寸前まで成長していたことが、発表されました。

爬虫類の単為生殖は、別の種では確認されており、ワニが単為生殖しても、不思議ではありません。ただ、実際に確認されたのは、今回(実際の産卵は2018年)が初めてだったそうです。



孵化寸前で死んでしまった個体について、母ワニと遺伝子を比較した結果、99.9%が一致し、単為生殖が確認できたようです。

ただ、この99.9%の意味ですが、全遺伝子の99.9%ではないはずです。
アフリカワニの全遺伝子の中で、個体差が出る部分において、99.9%が一致したのでしょう。

例えば、人類とチンパンジーでは、全遺伝子の98.7%が一致するそうです。
また、人類の個体差(個人差)は、全遺伝子の中の0.02%ほどだそうです。
人類は、どんな他人でも、99.98%は遺伝子が一致するのです。

全遺伝子の99.9%の一致なら、アフリカワニの個体差どころか、ワニ目の他の科でも、それくらいは一致しそうです。
単為生殖の証拠なら、個体差の部分が99.9%一致したのでしょう。



ところで、単為生殖には、2種類あります。
通常、卵を作る際には、減数分裂をします。
単為生殖は、減数分裂した卵から成熟する一倍体の場合と、減数分裂せず、母親の遺伝子をそのまま引き継ぐ二倍体の場合の2種類です。

ワニは、減数分裂せず、二倍体のままの単為生殖です。


ハチは、性決定遺伝子を持ちますが、単為生殖もします。
単為生殖は、減数分裂後の一倍体です。
ハチの性決定は、哺乳類と同じ雄ヘテロ型です。
(昆虫は、ハチやアリのような雄ヘテロ型と、カイコのような雌ヘテロ型がある)
雌は、Y染色体を持たないので、一倍体であれ、二倍体であれ、単為生殖の子供はメスになるはずです。(ハチの単為生殖は、一筋縄ではいかないみたいですが・・)


実は、鳥類でも、単為生殖が確認されています。
鳥類は、雌ヘテロ型なので、生まれてくるのは、雄のみになるのでしょうか。

雄ヘテロ型は、XYは雄、XXは雌になります。
基本となる性別は雌で、Y染色体の中にあるSRY遺伝子によって、性腺原基を男性型に変えます。
ですが、Y染色体は、男性の染色体の中にも1本しかないため、他の染色体からの補修ができず、徐々に矮小化していきます。
そのため、Y染色体の対になるX染色体がなければ、生存に必要な遺伝子が足りず、生き残ることができません。
なので、一倍体の単為生殖では、X染色体を持つ個体は生存できますが、Y染色体しかない個体は生存できず、結果的に、雌のみが生まれてくることになります。

雌ヘテロ型では、ZZが雄、ZWが雌になります。
雄ヘテロ型と同様に、雌ヘテロ型でも、W染色体は矮小化するため、Z染色体を持たなければ、生存できません。
なので、一倍体の単為生殖では、W染色体を持たない雄ばかりになりそうです。
因みに、鳥の単為生殖では、二倍体のままなので、母鳥の遺伝子を受け継ぐので、全て雌になります。



人類を含む哺乳類では、単為生殖は確認されていません。

神話の世界に踏み込むと、聖母マリアが処女懐胎でキリストを産んでいます。
他にも、古代ギリシャやローマの神話にも、処女懐胎で異能の男児を出産する話があるそうです。

仮に、人類の単為生殖が可能だとした場合、一倍体の単為生殖なら、雄ヘテロ型の人類は、Y染色体だけでは生存できないため、結果として女性しか産まれてきません。
二倍体の単為生殖なら、母親の遺伝子を全て受け継ぐので、性別も母親と同じになります。
人類が単為生殖した場合、その子供は、必ず女性になるはずです。

これ以上は、不快に感じる方もいるでしょうから、控えます。



脊椎動物の単為生殖は、二倍体のままです。
一倍体では、生存できないのかもしれませんね。
トリソミー(一部の染色体が三倍体)は、様々な障害が発生します。
三倍体で問題があるのなら、一倍体は更に厳しいはずです。

脊椎動物の単為生殖は、一倍体では生存が難しいから、二倍体なのかもしれませんね。




現在、人類による開発や地球温暖化によって、多くの種の生存環境が脅かされています。
これらの生物種の繁殖方法として、単為生殖は、期待されるところです。

ただ、様々な手段を講じて、強引に生物種を保存するのではなく、環境そのものを守っていく方向になると良いなと、思っています。