小泉進次郎農相は、作況指数を廃止するとしています。
内容はさておき、唐突さや自己都合(米の増産政策)を感じさせる点は、トランプを彷彿させます。
内容はさておき、唐突さや自己都合(米の増産政策)を感じさせる点は、トランプを彷彿させます。
1.現状把握
70年前(米に限定すると100年前)から続けてきた作況指数を変えるには、色々なことを考えなければなりません。
小泉農相は、どこまで考えて言っているのか、不安があります。
1.1.作況指数とは
都道府県毎に、過去30年間の平均収穫量と当年の収穫量の比率を、作況指数と言います。
全国で無作為に抽出した約8000ヶ所において、各田の3ヶ所で実測調査を行います。
1.2.作況指数の判定基準
作況指数により、作柄は、以下のように判断されます。
・106以上 : 良
・102〜105 : やや良
・ 99〜101 : 平年並み
・ 95〜 98 : やや不良
・ 91〜 94 : 不良
・ 90以下 : 著しく不良
1.3.作況指数の利用
作況指数は、農家の経営判断、流通・小売では販売戦略に使われています。
また、政府の農政にも、判断材料として使われているようです。
1.4.作況指数の弱点
無作為に抽出しているとは言え、点の集合体です。
面での調査ではありません。
それ故、精度に問題があります。
また、作況指数の対象とする良質米と、いわゆるクズ米を区別しないで、作況を計測しています。
それ故、市場価格への影響が大きい良質米の作況が、作況指数に反映されにくくなっています。
2.小泉農相の考えと問題点
小泉農相は、作況指数を廃止すると言っていますが、代わりに、衛星からのデータで作況を調査するとしています。
小泉農相の考えは、精度の高い作況の調査方法に切り替えることです。
2.1.精度の程度
精度が低いとしていますが、具体的にどれくらい実際と乖離しているのでしょうか。
あるいは、現状の1%単位では、精度が不足しているのでしょうか。
過去20年間の作況指数と、実際の収穫量を比較したところ、作況指数の標準偏差は、『1.07』でした。
つまり、約60%の確率で、作況指数の誤差は±1以内に収まるのです。
この精度は、問題なのでしょうか。
問題であれば、標準偏差は、どれくらいまで小さくなれば良いのでしょうか。
2.2.継続性
統計は、サンプルが多いほど、精度が高まります。
それとは別に、長い期間のデータの蓄積も、非常に重要です。
小泉農相は、唐突に廃止を宣言しました。
これでは、過去のデータとの比較ができません。
前述のように、まずまずの精度があるので、農家、流通・小売業者は、長年、目安として利用してきたのです。
基準が変われば、これまでの経験も役に立たなくなります。
2.3.根拠が薄弱
データの精度が低いとする根拠が、どうやら昨夏からの米騒動の原因を米不足としているためのようです。
昨夏から始まった米価格の高騰は、日向灘沖の地震で、巨大地震注意が発表されたことが切っ掛けで、元々米不足だった訳ではありません。
国民が備蓄に走り、一時的に不足したため、米価が上がったのです。
また、インバウンド需要が急速に高まり、消費量が想定より増えたことも、一因となりました。
小泉農相は、単純に「米が足りないから価格高騰した」、「作況指数の精度が低いから、米不足を把握できなかった」と考えたのでしょうか。
更に、「作況指数の精度が低いから、これを廃止しても問題ない」、「新しい基準は、関係者のためになる」と、思い込んでいるのでしょうか。
どうも、発想がトランプに似ています。
「非関税障壁があるから、アメ車が売れない。非関税障壁を撤廃させれば、アメ車も飛ぶように売れる」と考えるトランプと、小泉農相の発想は、似ています。
3.伊牟田の考え
3.1.精度向上と利用拡大
作況指数の精度を向上させることには、賛成です。
仮に、作況指数が『100』の時に、ちょうど必要量だとすると、『1』は、120万人分の米の量に相当します。
もし、これだけ不足すると、米価はかなり上下するはずです。
なので、標準偏差が『0.1』以下くらいになる制度が欲しいところです。
では、この精度をどの発表段階で出すべきでしょうか。
作況指数は、8月、9月、10月、12月の4回に渡り、発表されます。
全ての発表時に、高い精度で出せれば良いのですが、気象の中長期の予報の精度も関係するため、8月や9月の発表は、精度を高めることは難しいでしょう。
逆に、8月の時点で高精度なら、9月以降の発表は不要です。
どの段階でも。精度が高ければ高いほどありがたいのですが、12月発表分以外は、予測なので、精度向上には限界があります。
その中で、それぞれのタイミングの作況指数を、どう利用するのかによって、求められる精度も変わってくるはずです。
3.2.利用拡大
例えば、現行の8月分の作況指数と同等の精度で、7月に発表できれば、新たな利用価値を有無かもしれません。
また、作況指数のクラス分けにより、
良質米とされる粒の大きな米と、食用に利用可能な最低レベルの粒の米に分け、それぞれの作況指数を算出することで、市場価値と不作対策に利用できます。
3.3.計算方法変更の留意点
作況指数を新しい計算方法に変更する場合、留意しなければならない点があります。
まず、新しい計測方法の精度の確認です。
新しい計算方法は、本当に以前より精度が高いのか、どれくらい精度が向上しているのか、検証しなければなりません。
次に、従来の計算方法からの連続性の確保です。
作況指数は、永らく利用されてきたのです。
なので、計算方法が変更されても、これまで通りに利用できる必要があります。
両者を解決するためには、過去に遡って再計算できることが望まれます。
過去に遡れれば、計算結果と実際を比較できます。
これにより、精度を検証することが可能になります。
また、過去の作況指数と新しい計算方法を併記することで、連続性を担保できます。
小泉農相は、衛星から観測も利用するようなことを言っています。
この技術は、1970年代初頭のランドサットに始まります。
当時と現在では、観測精度が大きく違うはずですが、リモートセンシング自体は、基本的に同じです。
新しい計算方法に耐えられるほど、解像度や帯域がないかもしれませんが、時代を下れば、新しい計算方法にも対応できる観測精度になるはずです。
例えば、2006年に打ち上げられた『だいち1号』以降なら、同一の計算方法で検証できるのではないかと思います。
ただ、残念なのは、2011年4月から2014年5月まで、観測の空白期間があります。この間は、試験観測のデータもありません。
更には、『だいち3号』は、H3の試験機に載せる離れ技を使い、大失敗しました。
(現在は、『だいち4号』が運用中)
ところで、衛星を用いるメリットは、実質的なサンプル数を増やして精度を上げられることですが、デメリットは、個々の数値は現状の実測より精度が落ちることです。
精度向上を図るには、これらの組合せとバランス、検証とフィードバックが大切です。
私なら、数年掛けて、改善していきますね。
同時に、将来的な見直しの手続きを作ります。
正直なところ、私は、作況指数の問題点を調べてきませんでした。
小泉農相の宣言を機に調べてみたのですが、調べるほど、小泉農相が何をしたいのか、わからなくなっています。
それ故か、小泉農相とトランプが、似て見えてしまうのです。
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