言葉は、時代と共に、変化していきます。
それを拒むことは、意味がないことであり、極めて困難だと思います。

ただ、コメンテーターの誤用による変化は、別の問題を生むので、見逃せません。



一昨夜と昨夜には、『沈黙の艦隊』が放映されました。
ここでは、潜水艦が水圧で潰れる現象を、『圧壊』と表現していました。
一昨年の『タイタン号事故』から、『implosion』の直訳である『爆縮』が使われ始め、『爆縮』も『圧壊』も知っていた人々から、繰り返し指摘されています。
タイタン号事故以前は、潜水艦の事故で『爆縮』を使うことは、私の記憶ではありませんでした。
例えば、1963年に発生したスラッシャー号事故も、『圧壊』と表現されています。
なので、『爆縮』が出てきた時には、面食らいました。


なぜ、突然に『爆縮』が出てきたのかを考えると、民間の潜水艇の事故は珍しかったことが上げられるでしょう。そのため、『圧壊』という言葉に馴染みがなかったのです。
民間の事故なので、軍事に関心がなく、技術系にも関心がない社会部の記者が、タイタン号事故の記事を書いたのです。
そのため、アメリカの当局の発表を直訳してしまったのです。
更に、同じように軍事にも技術系にも関心が薄いTVのコメンテーターやMCらが、『爆縮』のまま広めてしまったわけです。


「爆縮ではなく、圧壊が正しい」との指摘に反発する方もいます。
どうしても潜水艦が水圧で潰れることを『爆縮』と言いたい方は、『沈黙の艦隊』の原作者のかわぐちかいじ氏や、映画をプロデュースした大沢たかお氏に、「圧壊では誤りだ。爆縮に修正すべきだ」と修正の要望を入れてはどうでしょうか。
もちろん、クレームや誹謗中傷は、論外です。
『圧壊』ではダメで、『爆縮』が正しいのか、論理的な説明を付加するのは、当然です。
できるのならば・・・の話ですが。

元々、圧力によって壊れるので、日本では『圧壊』と言われてきました。
なので、『圧壊深度』というのもあります。
タイタン号事故以降では、『爆縮深度』も見られるようになりましたが、『爆縮』より遅れて散見されるようになったので、おそらく『爆縮』に引き摺られたのでしょう。

私からすれば、タイタン号の事故原因を書いた記事を見ても、『爆縮』と表現されていれば、慎重に読むようにしています。
なぜなら、『圧壊』を知らないので、過去の事例を知らず、かつ技術系にも関心がない人物が書いているので、こちらで正誤を判断しなければなりません。
絶対に、鵜呑みにはできません!

そもそも、『爆縮』とは、爆発力を利用して圧縮し、高温高圧を作り出すことを指し、潜水艦が壊れる現象を指すものではありません。
核兵器の起爆の仕組みは、『爆縮レンズ』と呼ばれています。
少なくとも、潜水艦が壊れる現象を指す言葉ではありません。



問題は、内容を理解していない、理解するための知識さえ持たない人物が、専門家のように解説することにあります。
その解説によって、言葉が書き換わっていくとすれば、大問題です。

ただ、この流れを止めることは、極めて困難です。
コメンテーターにしても、MCにしても、ジャーナリストにしても、自分達の意思で方向性を決め、声高に広めていまうので、止めようがないのです。

本当に、面倒です。




何度も書いていますが、メディアが正しい事柄を書かないなら、為政者の思う壺です。
「フェイクニュースを垂れ流す」として、報道管制を正当化されてしまいます。
(トランプは、正誤の基準さえ変えてしまったので、世論の反発を受けているが・・)

本当に、真面目に報道姿勢を正していかなければ、取り返しがつかない世界になります。