2025年10月12日の0時過ぎから、『ひまわり9号』との通信障害が発生し、観測は、待機中だった『ひまわり8号』に切り替えられました。


『ひまわり9号』のトラブルは、これが2度目でした。

1度目は、2024年11月11日でした。
機器の温度上昇が原因で、正常なデータが配信できなくなりました。
赤外線カメラでは、温度ノイズを減らすために極低温に冷却されていますが、温度が上昇したため、観測に支障が出たのです。
冷却装置に指令を入れ直し、16時間後に復旧しています。

今回は、各カメラと衛星本体との間の通信障害だそうです。
現在、原因は不明で、復旧の目処も立っていません。

現在は、『ひまわり9号』は、観測できない状態が続いています。
そこで、待機任務中だった『ひまわり8号』が、観測を引き継いでいます。


『ひまわり8号』は、2014年10月7日に打ち上げられ、静止軌道への投入と機器の調整を経て、2015年7月7日から本運用に入りました。
衛星本体の設計寿命は15年、観測機器の寿命は8年です。
そこで、観測機器の寿命が尽きる半年前の2022年12月13日に、『ひまわり9号』に引き継がれました。

『ひまわり9号』は、2016年11月2日に打ち上げられ、2022年12月13日から運用開始しました。
『ひまわり9号』も、衛星本体の設計寿命は15年、観測機器の寿命は8年です。
なので、2030年頃に観測装置の寿命は尽きます。
また、衛星本体の寿命も、2031年頃に尽きます。


後継の『ひまわり10号』は、2028年度の打ち上げ予定でしたが、開発の遅れから2030年度に遅れることが発表されています。
打ち上げから運用開始まで1年近く必要なので、運用開始は、2031年になるでしょう。
『ひまわり9号』は、2034年頃まで延命可能とされていますが、現状を見ると苦しいでしょう。
『ひまわり8号』は、2年早く打ち上げているので、単純計算で、延命は2032年頃でしょうか。

それより深刻なのは、バックアップ機が完全に無くなることです。
『ひまわり11号』は、予定がありません。
『ひまわり9号』の寿命が完全に尽きる前に、『ひまわり11号』を運用可能な状態にする必要があります。そのためには、遅くとも2033年度には打ち上げなければなりません。
同型機を打ち上げるとしても、そろそろ予算化の時期ではないかと思います。


それにしても、綱渡りになっていますね。
遅れの原因の一つが、『ひまわり10号』の着手時期です。
『ひまわり10号』は、2023年に製造を開始しました。
間が空き過ぎているのです。
これでは、『ひまわり8、9号』の開発経験者は、アサインできていないでしょう。
『ひまわり8、9号』は、2009年から開発が始まり、2016年には運用を開始しています。
なので、2017〜2022年は、『ひまわり8、9号』の経験者は、他のプロジェクトに参加していたことになります。
当然、2023年に手が空いていた経験者は、ほとんどいないでしょう。つまり、真っ新な状態から、開発を始めることになります。
これは、非効率ですし、トラブルも頻発するでしょう。


私は、改造業務を行っている時代に、クライアントから「改造を頻発に出しているのは、経験者を繋ぎ止めるためだ」と明かされたことがあります。
同じ考えた方をするなら、『ひまわり8号』の運用が始まると同時に、『ひまわり9号』の開発を始めたなら、『ひまわり8号』の経験者を繋ぎ止めることができたはずです。
それは、『ひまわり10号』にも引き継がれ、開発時のトラブルも減らせたはずです。

『ひまわり8、9号』を一括発注したのは、費用を抑えるためだったと承知しています。
ですが、『ひまわり9号』は、宇宙線に曝されて劣化した中古の状態で、『ひまわり8号』を引き継ぐことになり、設計寿命通りに稼働するのは容易ではなくなります。
それ以上に深刻なのが、技術の継承、継続です。
継続性がないなら、毎回、新規開発をするようなもので、意味がありません。
結局、トラブルが続出し、最悪は、軌道投入後のトラブルで運用できないことになりかねません。

類似の事例では、同じ気象衛星『みらい』の打ち上げ失敗があります。
これが影響し、『ひまわり5号』は、設計寿命の5年を超えて8年も運用を続けました。
それでも、『ひまわり6号』が運用開始するまでの2年間は、アメリカのGOES-9の代用運転を強いられました。(技術立国としては、屈辱的な状況でした!)




過去の事例も踏まえ、『ひまわり11号』は、『ひまわり10号』の開発陣を繋ぎ止め、かつ新技術を導入するため、直ちに『ひまわり11号』を予算化するべきでしょう。

予算がない?

急増する防衛予算の増額分の1%もあれば、10年以内に運用に入れるでしょう。
2022年度の防衛予算はそのままにして、そこからの増額分を1%だけ、気象衛星開発費へ転用すれば良いのです。
増額分のたった1%で良いのです。