箱根駅伝の5区は、標高差864mを駆け上る、ロードレースとしては他に類を見ない特殊なコースです。
それ故に、ここを得意とする選手は、『山の神』と呼ばれてきました。

『山の神』という言葉は、父から聞いたのが最初でした。
100年を超える歴史を誇る箱根駅伝なので、これまでに『山の神』と呼ばれた選手も、何人もいます。


私の記憶に残る『山の神』は、東洋大の柏原竜二さんです。
二代目『山の神』として知られる選手です。

1年生で5区を任せられると、8人をごぼう抜きして往路優勝を勝ち取りました。
初代『山の神』今井正人さんが持つ5区の区間記録を、47秒短縮する区間記録を樹立しました。

2年生でも5区を走り、6人を抜いて2年連続の往路優勝を果たします。
また、自身の区間記録を10秒短縮し、2年連続の区間新も記録します。
この年は、トップから4分26秒差で襷を受け取りましたが、ゴールでは2位に3分36秒差をつけていました。

3年生でも5区を走り、2人を抜いて3年連続の往路優勝を飾ります。
トップから2分54秒差をひっくり返す快走を見せ、区間賞を取りますが、タイムは、歴代3位(1位も2位も柏原さん自身が記録)に止まりました。

4年生も5区を走りましたが、初めてトップで襷を受け取り、最初で最後の独走を演じました。
結果は、4年連続の区間賞、4年連続往路優勝、3回目の区間新を記録します。
5区の区間記録は、1位から4位まで、『柏原竜二』で埋め尽くされました。



柏原竜二さんの記録から18年しか経っていませんが、上位10傑にも残っていません。
コース変更の影響もありますが、時代の流れの早さを感じます。
なお、柏原竜二さんの1時間16分39秒の記録は、現在のコースに換算すると、1時間9分18秒に相当するのだとか。

後に、三代目『山の神』青学の神野大地選手が、24秒も更新します。
現在のコースに換算すると、1時間8分54秒に相当する驚異的な記録です。


ところが、今年の箱根駅伝5区には、四代目『山の神』が現れました。

中大は、過去の区間記録から35秒遅いだけの区間3位の好走を見せていました。
ところが、先頭からは3分24秒、中大からは2分12秒差で襷を受け取った青学の黒田朝日選手は、区間記録を1分55秒も更新する爆走を見せます。
残り1.5kmでトップに立ち、そのまま往路優勝を果たしたのです。

時計は、1時間7分16秒までしか刻みませんでした。

中大にとっては、『山の悪魔』と言いたいかもしれません。
それほど鮮烈な、四代目『山の神』の降臨でした。


ただ、初代は3年間、二代目は4年間、三代目は2年間と、過去の『山の神』は複数年の活躍を見せましたが、四代目は4年生なので、今回限りの『山の神』です。
それだけが残念な・・・


でも、黒田朝日選手は、元々『山の神』と言うより『地の神』と言うべきタイプです。

これからは、『地の神』としての活躍を期待しています。

本人は、『シン・山の神』と言っていますが、本名の通りの『ライジング・サン』の走りでした。