前回は、宏観現象について説明しました。
ですが、一部には、「早川氏の地震予知手法は、ちゃんとした理論がある」と思っている
方が居られるかもしれません。
まさか、自ら『データさえきちんとしていれば問題ない』旨の発言をされている村井氏を、
「理論がある」と思い込んでいる方はいないと思います。
彼の電子基準点を用いた地震予知手法こそ、典型的な宏観現象なのですから。
早川氏に限らず、肩書の立派な方が公表している地震予知を妄信しておられる場合、
私のような人間が「巷の地震予知は宏観現象にすぎない」と申し上げても、思考停止から
抜け出せないのではないでしょうか。
この「地震予知研究の手引き」は、そのような思考停止状態から脱却して戴くことを本望と
していますので、最後までお付き合い頂けますようお願いいたします。
早川氏は、最終的にパッキと割れる前に小さな割れ目ができる際に生じる電磁気で電離層が
乱れると、説明しています。
これを「科学的」と見る方も多いでしょう。
ですが、かなりデタラメな説明にすぎないのです。
まず、従来から知られている要因で説明しきれない部分は、全て地震の前兆としています。
検証時の条件や制約、他の要因などは、全て無視です!
また、地震の前兆だと考えた際に矛盾しないのか、全く検証していません。
つまり、「電離層の擾乱は地震の前兆」との思い込みがあり、言い訳程度の検証しかして
いないのです。
例えば、電離層の擾乱を起こすために必要なエネルギーはどれくらいなのか、全く考えて
いません。
阪神大震災クラスのM7.0の地震のエネルギは、2×10¹⁵J(約5億5000万kWh)です。
これは、東京電力の1日分の発電量とほぼ同じです。
早川氏が地震予知に成功したとする最小の地震はM4.3ですので、東京電力の7.7秒分
の発電量とほぼ同じです。
早川氏は、7.7秒分の発電量にしか相当しない小さな地震の前に、更に小さく割れる
現象だけで電離層の擾乱が発生すると主張しているのです。
地下深くのそんな小さなエネルギーで電離層を乱せるのなら、都市部の上空の電離層は、
いつでも乱れていそうなものです。
「早川氏の地震予知は高い成功率を上げている」とおっしゃる方も居られるでしょう。
それについては、彼の地震予知がマグレ当たりである事を、「もう一つの豊葦原中津谷」
で、詳細に分析&確認しております。
この中では、私のデタラメな地震予知モドキと早川氏の地震解析ラボを比較しています。
その結果、私の地震予知モドキの予知成功率が80%だったのに対し、地震解析ラボの
成功率は66.7%しかありませんでした。
また、地震予知に成功していれば示すであろう統計的な傾向も、一切見られませんでした。
早川氏の地震予知手法は、エネルギー面から見ても、統計面から見ても、地震を予知できて
いると考える要素は見当たりません。つまり、宏観現象にすぎないのです。
なぜ、このような結果になってしまっているのかは、前回にも述べたように、
地震と前兆の関係を論理的に思考しない点にあるのです。
ただただ「この現象は地震の前兆に違いない」と思い込み、「前兆」と主張できるように
宏観現象から地震発生までの期間を延ばしたり、対象とする地震の規模を小さくしたり、
震源までの距離を広くしたりして、成功率を稼ぐ事にのみ精力を注いでいるのです。
これを読んでいる方には、早川氏や村井氏のように思考停止に陥ってほしくないのです。
是非、真っ当な研究手法を採り、地震予知の実現に近付いて戴きたいと思っています。
なお、次回も、現状の地震予知研究の問題点の指摘を行いますので、御了承ください。
-地震予知研究の手引き(現状の問題点3)-
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