地震予知研究の手引きも、いよいよ佳境に入ってまいりました。
今回から、規模の推定方法について、具体的な地震予知手法に入っていきます。


さて、数回前に「地震の規模と場所の関係」というサブタイトルで、地殻に溜まっている
歪を正確に測定できれば、発生場所と地震の規模の両方を推定する事が出来る旨を、
説明しました。
では、地殻に溜まっている歪を調べる方法には、どんなものがあるのでしょうか。
最も現実的な方法は、電子基準点を利用する事でしょう。

念のために申し上げておきますが、同じように電子基準点を利用して偽地震予知を行う
JESEAとは大きく異なる方法を用いるので、同等には考えないようにお願い致します。
JESEAが利用するデータは、ノイズ除去が不十分な速報解の中から誤差が出やすい垂線
方向のデータを抽出しているので、ほぼノイズを見ているだけです。
一方、ここで利用しようと考えているのは、ノイズ除去が行われた最終解を用い、三次元の
変位を用いる方法です。

電子基準点は、日本全国を網羅していること、水平線超え遠方との距離も測定できること、
最終解が出るまでのタイムラグはあるがリアルタイムで変位を知ることができる等の優れた
特徴があります。
また、日本列島下で鬩ぎ合う4枚のプレート上に電子基準点があることから、プレート間の
関係を見ることもできます。
ただ、4枚のプレートの全てに電子基準点はありますが、太平洋プレートは南鳥島にしか
電子基準点がないので、詳細なデータを得ることはできません。
また、数量も不足しており、充分なデータ量があるとは言えません。


電子基準点の必要数を考えてみましょう。
現状は、全国の約1300ヶ所に電子基準点は設置されています。
電子基準点1基当たりのカバー面積は、平均約300km²です。
電子基準点の間隔は約15~20kmであることが、逆算で分かります。
これは、マグニチュード7クラスの地震の震源域の大きさとほぼ同等です。
これでは、全く足りません。

予知したい地震の規模から、具体的な電子基準点の必要数を計算してみましょう。

                (基準点の密度)   (電子基準点数)
  マグニチュード6.0    5kmメッシュ   15200基(概数)
  マグニチュード7.0   15kmメッシュ    1700基(概数)
  マグニチュード8.0   50kmメッシュ     152基(概数)
  マグニチュード9.0  150kmメッシュ      17基(概数)

電子基準点は、平常に便利な計測装置ですが、数量の問題があるようですね。
現状でも1300基もあるので、マグニチュード7クラスなら予知できそうですが、
そうではありません。
地震は、小さなタネから始まり、歪が溜まっている範囲の中で拡がると考えられます。
どこで地震(地殻の破壊)が止まるのかを知るためには、細かなメッシュで状態を
知っておく必要があります。
それが分からないなら、マグニチュード7クラスに成長する前に収まってしまう地震に
惑わされてしまうのです。


実は、電子基準点の問題はこれだけではありません。
次回は、その辺りも説明した上で、手法について説明したいと考えています。


-地震予知研究の手引き(規模の推定方法2)-