電子基準点を用いて地殻の歪を計測するには、数量面の問題があることは示しました。
ですが、それ以前に、もっと大きな問題があります。

それは、電子基準点の計測では、地殻に歪が溜まっていく速さしか分からないことです。
つまり、現時点で溜まっている歪の総量を知ることができないのです。


電子基準点は、地球上の相対的な座標しか分かりません。
歪を計測しているわけではないのです。
「過去一年間で○○の歪が増えました」とは言えても、元々の歪の量がわからないのです。

では、どうすれば歪がどれくらい溜まっているか、分かるのでしょうか。

一つは、大きな地震が発生した直後からの累積で判断する方法です。
大きな地震が発生すると、震源域の中の歪は、ほぼ解消されると考えられます。
ですので、そこからの電子基準点の動きを解析すれば、歪の蓄積が分かります。
この方法の欠点は、地震が発生した地点しか、用いることができないことです。
マグニチュード7クラスでも、リセットされる範囲は1000km²未満です。
しかも、内陸部の発生頻度は、高いところでも数百年に一度しかありません。
なので、この方法を利用できる場所は僅かで、次の地震の発生時期は数百年から数千年も
先になります。

二つめは、日本中でボーリング調査を行うことです。
この調査で歪が分かるのか、専門外の私は存じませんが、問題はそれだけではありません。
まず、ボーリング調査が可能な深さです。
ボーリング調査の世界記録は、12262mです。日本の最高記録は、6310mだとか。
地震が多い数キロから数10キロの深さまで掘ることは、現時点の技術では厳しいようです。
また、充分な数のボーリング調査を行うための費用も、実施を難しくします。
おまけに、掘削で出る土砂の処分も、意外に面倒なものです。


どうやら、これらの手段では、歪の蓄積量の計測は、なかなか難しそうです。


-地震発生時期の推定方法(規模の推定方法3)-