地殻の歪は、基本的には長期に渡って一方向に変位していくはずです。
ですが、見逃すことのできない大きな力も、地殻に働きます。
潮汐力です。

潮汐力は、およそ12時間半の周期で変化します。
しかも、潮汐力による地殻の変化量は、10cm以上もあります。
これは、プレートの動きによる歪の変化量の1年分以上にもなります。
これほど大きな変化ですが、周期変化なので、歪は蓄積しません。
(正しい意味での歪は蓄積しますが、ここではプレートによる圧力を歪と表現しているので、その意味では蓄積しないと表現しました)

ですが、広い範囲(南北方向)で同じ方向に歪が変化するので、歪を表しているか確認する上で、一助となるはずです。
また、歪の変化は、必ず東から西へと移動していくので、見つけやすくなるはずです。


折しも、「巨大地震は強い潮汐力が働く時期に多い」との論文が発表されました。
また、古い論文でも、プレート境界が南北方向に伸びる場所で、潮汐力の大小と地震発生との間に相関が見られると発表されているそうです。
プレート境界が東西方向に伸びる場合、潮汐力の位相はずれますが、南北方向なら同期するので、広い範囲で歪の増加が同期し、巨大地震になりやすいと解釈できます。

こんな考え方もできます。
海水の潮汐は、月による実際の潮汐力とは2時間程度位相がずれています。
これは、地球の自転によって、満潮部分が自転方向に引き摺られて起きます。
もし、自転がなければ(厳密には月の公転と地球自転が同期)、海水も地殻も重力と潮汐力がバランスした状態になります。
ですが、実際には位相がずれているので、満潮部分の海水は潮汐力があまり働かず、地殻に圧力をかけます。
逆に、月が南中している場所は、潮汐力で浮き上がる力を受けることになります。
これが、地殻の歪を一時的に大きくする可能性もあり得るでしょう。


地殻の歪を表していると思われる観測値をお持ちの方は、まずは潮汐力の変化と比較してみるのが良いかもしれませんね。


-地震予知研究の手引き(研修手法4)-